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建物の“長寿命化”には欠かせない「長期修繕計画」とは?メリットから活用方法まで詳しく解説

マンションを所有している方にとって、その建物の資産価値をいつまで維持できるかはとても重要なポイントでしょう。

「できるだけ長く貸し出したい」「維持費をできるだけ抑えたい」そんな風にお考えの方も多いはずです。

そこで、重要なポイントとなるのが「長期修繕計画」。

建物を長寿命化し、その価値を長きに渡り維持できます。

しかし、「聞いたことはあってもどんなものかは分からない」という方もいらっしゃいます。

そこで、今回は建物の「長期修繕計画」について、内容から作成方法まで詳しくお話しします。

ご自宅や所有不動産のメンテナンスについて心配な方は、是非参考にしてください。

このコラムのポイント
●「長期修繕計画」は、建物の機能を維持し続けるために欠かせない資料です。
●作成してからも、定期的な内容の見直しが必要です。
●関防協は、防水のエキスパート集団です。




最近よく聞く「長期修繕計画」って何?どうして作るの?

建物における「長期修繕計画」とは、一般的に築10〜30年程度の期間について、各部位に関する工事を「いつ」「いくらぐらいで」行うかをスケジュール化した資料です。

修繕費の予算立てや修繕積立費の根拠付け、いざ補修工事を行う際に速やかに実施しメンテナンス時期を逃さないことが目的で作成されます。

対象となるのは共用部で、主に下記のような工事について明記されます。

  • 防水工事(屋上やベランダ、駐車場床など)
  • 外壁改修工事(塗装やタイル貼り替えなど)
  • 鉄部塗装工事((手すりやフェンス、換気口など)
  • 建具・金物工事(玄関ドア、手すり、鉄骨階段、集合ポスト、メーターボックスなど)
  • 給排水工事(給排水管、貯水槽、給水ポンプなど)
  • ガス設備工事
  • 電気設備工事(配電盤、幹線設備、避雷針、電灯設備など)
  • 情報通信設備工事(電話設備、テレビ設備、インターネット設備、インターホン設備など)
  • 消防設備工事
  • 外構工事 …


これらの工事は「大規模修繕工事」としてある程度の周期で施工しますが、事前に十分な修繕積立費を確保するためにも、長期修繕計画は欠かせません。

建築基準法でも、建物の維持保全は所有者(もしくは管理者や占有者)が行わなければいけないと明記されています。

第八条(維持保全)
建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
 次の各号のいずれかに該当する建築物の所有者又は管理者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するため、必要に応じ、その建築物の維持保全に関する準則又は計画を作成し、その他適切な措置を講じなければならない。ただし、国、都道府県又は建築主事を置く市町村が所有し、又は管理する建築物については、この限りでない。
 特殊建築物で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの
 前号の特殊建築物以外の特殊建築物その他政令で定める建築物で、特定行政庁が指定するもの

引用:e-Gov法令検索|建築基準法


また、マンション標準管理規約では、管理組合が行うべき業務のうちの一つに「長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理」を定めており、以下のような記載もあります。

建物を長期にわたって良好に維持・管理していくためには、一定の年数の経過ごとに計画的に修繕を行っていくことが必要であり、その対象となる建物の部分、修繕時期、必要となる費用等について、あらかじめ長期修繕計画として定め、区分所有者の間で合意しておくことは、円滑な修繕の実施のために重要である。

引用:国土交通省|マンション標準管理規約 第32条関係


このように、建物を健全な状態に維持するためには「長期修繕計画」はとても重要な役割を果たすのです。



「長期修繕計画」の主な内容は?

長期修繕計画書には決まった書式はありませんが、構成はどれもほとんど同じです。

下記のような項目が明記されています。

建物の設備や概要について

敷地面積や建築面積、構造、竣工日などの基礎的情報から、設備機器(給排水、ガス、電気、通信、防災、エレベーター、駐車場など)のリストなどが記載されます。また、新築時の施工会社や管理会社の連絡先や、所有者区分についてもはっきりと書かれます。

建物診断・各点検の結果や詳細、修繕履歴について

各設備の法定点検や、定期的に行われる建物診断の実施年月日とその結果を記載します。また、過去に細かな修繕や大規模改修工事を行なっている場合は、その内容も明記し、今までどこをどのようにメンテナンスしたかが分かるようにしておきます。

設計図書の保管状況

竣工図や構造計算書、数量計算書、確認申請書副本など、その建物に関する書類がどれほど保管されているかを明記します。マンションの場合は、分譲時のパンフレットや管理規約なども設計図書に含みます。

修繕積立費の設定根拠や会計状況について

現在の修繕積立金額や残金、収入として見込める駐車場などの使用料、借入がある場合はその額を記載します。

劣化の状態を踏まえた具体的な修繕工事計画

該当する工事項目において、劣化現象の有無や原因、修繕方法を記載します。かなり細かな内容となるため、基本的には建物診断を行なった施工会社が作成します。

修繕工事推定価格や実行予定年月

修繕にかかるであろう概算見積書や、実行スケジュールを明記します。


これらを全て記載した資料があれば、中長期的な工事資金の予算建てがしやすいだけではなく、メンテナンスすべき場所をもれなく補修することができます。

また、住民や建物利用者、分譲物件の購入を検討してる人にも正確な情報をすぐに開示できるため、建物が正しく管理されていることをアピールできるでしょう。




計画内で特に重要なのが“防水工事”

シート防水施工写真

計画書内に記載されている工事はどれも欠かせない項目ではありますが、その中でも建物を正常な状態に維持するためには「防水工事」が特に重要です。

防水改修を怠れば、雨漏りによって内装にまで被害が及ぶだけではなく、建物のを支える構造体にまで悪影響を及ぼします。

そのため、屋上やベランダなど風雨にさらされる場所においては、特に重点的に定期点検を行い、劣化現象を早めに見つけることが重要です。

防水専門施工会社に問い合わせれば、建物を目視でくまなく調査して診断書を作成してくれます。

「長期修繕計画」を作成する際は、専門家に問い合わせてみてください。

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作成は個人でもできるって本当?

長期修繕計画書の作成をする方法は主に3つです。

  1. 建物の管理会社に相談し、無料(もしくは有料)で作成してもらう
  2. 建物管理コンサル事務所に依頼する
  3. 管理組合もしくは所有者自身が施工会社と共同で作成する


分譲マンションなどの場合、建設会社と関連する管理会社がついている場合が多いでしょう。

その場合は新築時に長期修繕計画書を合わせて作成しているケースも多く、その後の計画修正も管理会社が取り仕切ります。

ただし、作成は無料の場合と有料の場合があるので、必ず事前確認しましょう。

管理会社とは関係ないコンサルタント会社に作成する場合もあります。

この場合は有料になりますが、診断から計画書作成、施工会社選定、工事管監理までを全て任せられるため、かなりの労力を減らせます。

また、いざ修繕工事をする際に施工会社と価格交渉してくれるなど、価格面でのメリットも多いです。

小規模マンションや一棟所有の建物の場合には、所有者自身で作成することもできます。

もちろん、建物の診断や適正な修繕計画を行うことは素人では困難ですが、施工会社と協力しながら計画書を埋めていくことは十分可能です。

最近では、パソコンで簡単に操作できる作成ソフトやエクセルの雛形もあるので、「大切な所有物件は全て把握したい」という方は、資料作成に挑戦してみても良いでしょう。

ただし、信頼できる施工会社の協力がなくては、正しく機能する長期修繕計画は作成できません。

イチから施工会社を探す場合は、複数社に調査・見積もり作成をお願いすることをおすすめします。

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初めての作成には国土交通省のガイドラインが参考に

国土交通省では、適切な長期修繕計画の作成を促し、マンションなどにおける修繕積立費に関するトラブルを防ぐために、「長期修繕計画作成ガイドライン」を公表しています。 

その中には、長期修繕計画標準様式も含まれているため、それに沿って項目を埋めていくだけで不備のない計画書が作成できます。

また、修繕積立費額の設定についての考え方についても細かく解説されているため、個人所有の建物においても管理会社やコンサル会社に依頼せずともある程度の資金計画を想定できます。

計画書の内容について詳細を知りたい方は、ぜひ併せてご覧ください。



「作成」・「更新」・「活用」が重要

雨漏り診断

「長期修繕計画」は一度作ればいいという訳では決してありません。

建物の立地環境や使用状況、天災による影響などで、当初立てた修繕計画から内容や周期が変動することは往々にしてあるのです。

ですから、実際に修繕工事を実施する時期を決定する際には、計画書はあくまで参考資料とし、都度建物調査を依頼しましょう。

また、修繕工事やその他突発的に発生したメンテナンス工事の実績を踏まえ、定期的に計画を見直すことも重要です。

経年によって思わぬ修繕工事が増えたり、物価の変動で工事価格が上昇する可能性は否めません。

先ほど紹介したマンション標準管理規約では、作成期間や内容更新についての記載もあります。

長期修繕計画の内容としては次のようなものが最低限必要である。

1 計画期間が25年程度以上であること。なお、新築時においては、計画期間を30年程度にすると、修繕のために必要な工事をほぼ網羅できることとなる。

2 計画修繕の対象となる工事として外壁補修、屋上防水、給排水管取替え、窓及び玄関扉等の開口部の改良等が掲げられ、各部位ごとに修繕周期、工事金額等が定められているものであること。

3 全体の工事金額が定められたものであること。また、長期修繕計画の内容については定期的な(おおむね5年程度ごとに)見直しをすることが必要である。

引用:国土交通省|マンション標準管理規約 第32条関係


つまり、長期修繕計画を有効活用するためには、「適正期間での作成」「定期的な更新」が不可欠で、信頼できて長期にわたって付き合える施工会社を見つけることもとても重要なポイントです。

作成はされているもののうまく活かされていないというデータも

国土交通省が行なった調査によると、平成30(2018)年には、マンションの9割以上が長期修繕計画を立てているという結果が出ました。

一方で、5年を目安にその内容をきちんと見直しているという物件は60%にも至りません。

(データ参照元「国土交通省|平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」)

つまり、作成はしたものの正しく活用されていないということです。

長期修繕計画を作成する際は、その後も定期的に更新できるような環境づくりも必要になります。



関防協は、防水工事の「エキスパート集団」です。

「長期修繕計画」を立てる際に工事会社を選ぶのに不安を感じる方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合(関防協)へまずはお気軽にご相談ください。

当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計191社の正会員がおります(2019年11月時点)。

また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。

「雨漏り診断をどこに依頼すれば分からない」「信頼できる施工会社の選び方が分からない」そんな方は関東防水管理事業協同組合へご相談ください。

当HPでは、防水改修調査診断員による無料診断も申し込みや、マップ上での施工店検索ができます




まとめ|長期修繕計画を基に、建物の”長寿命化”を目指しましょう

長期修繕計画は、建物の機能を正常に維持するだけではなく、劣化を未然に防ぐという意味でも“長寿命化”につながります。

作成する際にはそれなりの労力は必要なものの、関連情報をひとまとめにしておくことで、売買時などの印象もかなり変わりますし、資産価値の維持にもなるでしょう。


私たち関防協では、現状の建物調査も承っております。

「信頼できる業者がわからない」そんな方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合のネットワークで信頼できる工事店を探してみてください。

都道府県別に登録業者を検索できるため、近くの工事店を簡単に見つけられます。少しでも防水に不安や不満を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。



運営者情報

関東防水管理事業協同組合事務局

関東防水管理事業協同組合事務局

建設防水業界トップシェアの田島ルーフィングが主催する、改修工事に特化した工事店ネットワーク。
日々進化する防水工法や現場のニーズに合わせた最適な対応を行うため、施工技術者の育成にも取り組んでいます。
当サイトでは、マンションなどの一般住宅から店舗、大型ビルなど、さまざまな現場を見てきた防水のプロが豊富な知識と経験を活かして防水工事についてわかりやすく解説します。

主な資格
建築士 コンクリート診断士 宅地建物取引士 防水改修調査員

関防協(関東防水管理事業協同組合)について