〈マンション・ビルのオーナー様必見〉 雨漏りの応急処置で“やるべきこと”と“やってはいけないこと”
マンションやテナントビルなど、賃貸物件のオーナー様にとって最も不安なのが、「雨漏り被害」ではないでしょうか。
いくら災害保険に入っていたとしても、借り手の方に迷惑をかけてしまい、大きなトラブルに発展しかねないからです。
ですから、雨漏りを見つけると、被害を最小限に食い止めるべく、すぐに応急処置をしたくなるでしょう。
ところが、ここで気を付けなくてはいけないのが、「すぐにやるべきこと」と「やってはいけないこと」があるという点です。
そこで、今回は雨漏りが発生した場合の応急処置方法と、「やってはいけないこと」について詳しく解説します。
賃貸トラブルを避けたい方はもちろん、建物を少しでも長持ちさせたいという方は、ぜひ参考にしてください。
●雨漏りを見つけても、手当たり次第処理するのではなく、“やるべきこと”と“やってはいけないこと”を理解して、正しい応急処置をしましょう。
●関防協は、防水のエキスパート集団です。大規模修繕をご検討中の方は、私たちまでご相談ください。
Contents
雨漏りは建物の寿命を縮める天敵
建物にとって雨漏りとは、室内の家具や内装にダメージを与えるだけに止まらず、木造・S(鉄骨)造・RC(鉄筋コンクリート)造問わず、構造躯体を直接的に劣化させてしまう“天敵”です。
小さい劣化箇所からも内部へ雨水が侵入するため、なかなか被害が見つけられず、発覚した時には「もう手遅れ」という可能性もあります。
ですから、定期的に点検をし、少しの不具合も早めに対処しなくてはいけません。
「室内に大量の雨水が侵入していないから大丈夫」ということは決してなく、放置すればするほど大掛かりな是正工事が必要となり、金銭的負担も大きくなってしまいます。
では、雨漏りによってどのような不具合が発生するのでしょうか?
ここでは、木造・S造・RC造について詳しく解説します。
木造
木造の場合は、建物の歪みによって発生した外壁のクラックや、屋根材の劣化部位、窓やドアなどのサッシ周り、換気口周り、ベランダ周りなどから雨水が壁内に侵入するケースが多いです。
建物の規模が比較的小さいため、その他の構造よりも雨漏りによる不具合が露呈しやすいと言えるでしょう。
室内へ浸水すれば、内装材だけではなく構造躯体など建物を維持する上で重要な部位にまで深刻な被害をもたらしてしまいます。
柱などの構造体腐食や、シロアリ被害の増長、断熱材が濡れたことによる性能劣化などが懸念されますので、木造住宅を施工している工務店や、屋根施工店、戸建住宅の外壁施工店などに速やかに相談してください。
RC造
RC(鉄筋コンクリート)造は、木造と違って雨に強いイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実はコンクリート内部の鉄筋はとても雨に弱いです。
屋上防水や窓周りなどのシーリング目地が劣化するとコンクリート内部まで水が侵入してしまいますし、屋上の排水口が正常に機能していなければ溢れかえった水が脆弱部から内部に入り込んでしまいます。
また、外壁のクラックやベランダ周りの劣化にも要注意です。
一度壁内に“雨の通り道”ができてしまうと、慢性化してしまうケースも多いため、早めに発見しなくてはいけません。
鉄筋腐食
鉄筋コンクリートは、中央部に配置された鉄筋に規定以上のコンクリートが被っていることにより、腐食を防いでいます。しかし、経年劣化とともに生じたクラックなどによって、鉄筋にまで水が到達すればもちろん腐食し耐久性が落ちてしまいます。
鉄筋の爆裂によるコンクリート欠損
クラックなどから侵入した雨水が鉄筋に触れると、腐食するだけではなく膨張します。すると、中からコンクリートを押し上げてしまい、更なるひび割れの発生や欠損をもたらします。また、それをさらに放置すれば大きなコンクリートの塊が脱落する危険性もあり、直接的に構造体の強度低下につながります。
S造
S(鉄骨)造は、鉄骨そのものが建物の荷重を支えており、それが雨水によって腐食すれば致命的な被害となってしまいます。
鉄骨に使われる鋼板はある程度の厚みがあるため、水に触れたらすぐに穴が開く訳ではありませんが、気づかないまま何十年も雨漏りし続けていれば、間違いなく耐久性が低下します。
(参考:日本建築学会技術報告集 第18巻第38号|腐食した鉄骨部材の残存耐力・塑性変形能力に関する研究)
RC造と同様に、屋上防水や窓周りなどのシーリング目地の劣化や屋上排水不良、それ以外にも、外壁の仕上げにALC(軽量気泡コンクリート)板を使っていれば、その継ぎ目地の劣化が主な原因です。
鉄骨の腐食
建物の荷重を支える柱材や梁材の腐食が進み、そのまま放置すれば、穴が開くだけではなく、最悪の場合破断してしまう恐れがあります。
デッキプレートの腐食
デッキプレートとは、強度を保つために波形に形作られた床用の鋼板で、S造の場合は、床コンクリートスラブの型枠を兼ねた床材として使われます。こちらも鉄骨同様に、水の通り道になってしまえば、腐食してしまいます。
外壁ALC板の爆裂
ALC板にひび割れがあるとそこから水が侵入し、吸水してしまいます。すると、その水分が熱されて表面の塗膜とALC板表面の間に気泡となって現れ、水が溜まれば冬場には凍結します。これらの現象が起こると、ALC板そのものが爆裂してしまう恐れがあります。
集合住宅・ビルで雨漏りが起きた時の応急処置は?
雨漏りは、その構造体の種類を問わず、建物の強度を間違いなく低下させてしまいます。
これは資産価値を保つ上でもかなり大きな問題ですが、賃貸物件に関しては何よりも借り手の生活に支障をきたし、大きな訴訟トラブルへ発展しかねません。
なぜなら、建物所有者は賃借人に対して“瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)”があり、正常な状態に維持管理しなくてはいけないからです。
(賃貸人による修繕等)
引用:e-Gov法令検索|民法
第六百六条
1. 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2. 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
つまり、貸し出している物件の場合はなおさら雨漏りに注意しなくてはいけません。
そして、実際に雨漏りが発生した際にも、オーナーが速やかに対応する姿勢を見せることは円滑にトラブルを解決する上でも重要です。
では、実際にどのような応急処置を取ればよいでしょうか?
〈室内編〉
漏電対策
雨漏り箇所の付近にあるコンセントから家電などを抜き取りましょう。そのままにして雨水が触れれば、漏電事故が発生してしまいます。また、万が一に備えて、雨漏りしている範囲の小ブレーカーも落としておきましょう。
雨漏り被害箇所の写真を撮影する
保険請求するために欠かせません。また、経年劣化と賃借人の過失どちらに原因があるのかをはっきりする上でも有効的です。
雨水の被害を最小限に抑える
室内天井や窓などから室内へ水が侵入している場合は、真下にバケツを置いたり、それが難しい場合や侵入場所が広範囲に及ぶ場合は、ブルーシートで水を影響しない場所まで誘導するなどの処置を施しましょう。バケツやブルーシートで受けにくい場所の場合は、ペット用トイレシートやタオルで吸水する方法もおすすめです。
必要であれば天井や壁を一部解体する
天井や壁のボードからじわじわ水が滲み出している場合は、思い切って一部を解体し、ボードの被害を最小限に抑える方法もあります。一般的に建物の室内壁に使われている石膏ボード(プラスターボード)は、水を吸収して被害が広がり、広範囲にわたって耐力が著しく低下してしまいます。被害を最小限に防ぐためには、雨染みのある場所に穴を開けてみて、壁などの外に水を排出させるようにしましょう。
〈屋外編〉
雨水の侵入場所が思い当たる場合は、その部分に大きめのブルーシートなどを被せて、土嚢や針金などでしっかりと固定しましょう。
テープで固定すると台風などで吹き飛ばされる可能性があるので、注意してください。
ただし、被せた状態にするのは雨天時やその前後のみです。
雨が止んだ後も長時間そのままにしてしまうと、カビの原因になってしまいます。
また、まれに耐水ベニヤなどをビス固定してしまう方もいますが、防水層にビスで穴を開けてしまうと、より被害が拡大してしまう恐れがあるため、絶対にやめましょう。
絶対にやってはいけない応急処置3つ
雨漏りを見つけて焦るあまり、オーナーとしてできることを全てやらなくてはという気持ちになる方がほとんどでしょう。
しかし、雨漏りの応急処置として“絶対にやってはいけない”ことが3つあります。
これらをすることで、被害がより拡大する恐れがあるため、事前に把握しておきましょう。
その① コーキングの多用
雨水の侵入箇所が特定できない状態では、気になる穴や隙間を手当たり次第コーキングで防ぎたくなってしまうかもしれません。
しかし、これはかなり高リスクです。
なぜなら、本来内部に入った水を排出するために設けられたスリットや水抜き穴までも塞いでしまう可能性があるからです。
水の抜け道を絶ってしまえば、ら外部へ自然と流れ出るはずだった雨水を、躯体内部へ誘導してしまう危険性があります。
コーキングを応急処置に使えるのは、明らかに侵入箇所が特定できる場合のみです。
ただし、一般の方でそれを判断することは難しいため、むやみにコーキングを使うことはあまりおすすめできません。
その② 濡れた場所の防水テープによる修繕
コーキングと同様に、濡れた場所を防水テープで修繕するのもあまりおすすめできません。
接着面が濡れているとテープの接着性が低くそれほど意味がありませんし、テープの貼り方向を間違えれば、逆に雨水を集めてしまう可能性もあります。
ですから、やはり雨風に直接さらされる部分の応急処置をする場合、一般の方が防水テープを使うことは最善策とは言えないでしょう。
その③ 無理な高所作業
屋上や急勾配の箇所で手すりやフェンスがない場所において、安全帯などがない状態での高所作業は非常に危険です。
なぜなら、雨漏りが発生している雨天時や雨天時直後は、あちこちが濡れていて滑りやすいですし、工具を持ちながら移動するにも慣れていないと落下事故などの原因になるからです。
また、ご自身は無事だったとしても、うっかり工具などを落としてしまえば、通行人などに怪我をさせてしまう可能性があります。
ですから、間違いなく安全が確保できる場所を除いて、一般の方が高い場所で作業することは絶対におすすめできません。
雨漏りを見つけたらすぐに“プロ”へ相談することがベスト
雨漏りを見つけたら、まずはご自身でできる応急処置を施し、速やかに“プロ”へ連絡しましょう。
それこそ、早く完全解決に導く最善の策です。
「工事費を安く抑えたい」「施工スタッフが出入りするのが嫌」などという理由から、オーナーご自身でどうにかしようとする方もいらっしゃいますが、被害が余計広がってしまったり、是正工事が多くなって余計コストがかさむ可能性もあります。
「安く・早く・確実に」雨漏りを解決したい方は、まず防水のプロに連絡することが先決です。
原因箇所を速やかに特定し、被害を最小限に抑えながら、今後雨漏りしにくい建物にすることができます。
調査・見積もり依頼は信頼できる工事店やメーカーに
工事会社や工法を選ぶのに不安を感じる方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合(関防協)へまずはお気軽にご連絡ください。
関防協は、防水工事の「エキスパート集団」です。
当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計191社の正会員がおります(2019年11月時点)。
また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。
「雨漏り診断をどこに依頼すれば分からない」「信頼できる施工会社の選び方が分からない」そんな方は関東防水管理事業協同組合へご相談ください。
鉄筋コンクリート造の長寿命化には「リバンプ工法」がおすすめ
鉄筋コンクリート造の建物を長持ちさせるために必要なのは、ずばりプロによる定期的な建物調査です。
劣化を見つけてから処置をしては手遅れになる場合が多いため、劣化箇所を見つけ次第適切な改修をしなくてはなりません。
そこでおすすめな改修方法が、「リバンプ工法」です。
本工法は、不動態皮膜の再生機能を有する亜硝酸イオンを、いかに有効に効果を発現させるかを主眼としたものであり、リチウムイオンと組み合わせた「亜硝酸リチウム」として高い保水性を持たせ、コンクリート内でも乾燥固化せず浸透拡散を効率化した設計となっております。また、細孔を緻密化させると共に水分で満たすことによる劣化因子の高い遮蔽効果を有します。リチウムイオンはアルカリ骨材反応の抑制効果も有します。
引用:田島ルーフィング|躯体改修|リバンプ工法の効能
リバンプ工法は、現状の劣化度合いや立地条件に応じた躯体補修工法と適切な表面保護工法を組み合わせて建物を長寿命化させることができます。
建物を「中性化」や「塩害」から守るためにも、ぜひこのリバンプ工法を検討してみましょう。
〈関連ページ〉
田島ルーフィング|躯体改修|リバンプ工法の効能
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関東防水管理事業協同組合|コラム|鉄筋コンクリート造のマンション・テナントビルは改修できる?長寿命化に向けたポイントとは?
まとめ|雨漏りを見つけらた“焦らず速やかに”プロへ相談しましょう
雨漏りは、建物の耐久性を低下させる“天敵”です。
だからこそ、コストなどを気にしてオーナーご自身で対処しようとしても限界があります。
無理はせず“やるべき”応急処置をしてから、速やかにプロへ相談してください。
私たち関防協では、雨漏り後の防水工事はもちろん、現状の建物調査も承っております。
「いつ雨漏りが起こるか心配」「雨漏りは未然に防ぎたい」という方は、ぜひお問合せください。
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