シート防水とは?マンション管理組合が知るべき改修工法の種類と費用、大規模修繕の注意点

シート防水とは?マンション管理組合が知るべき工法の種類と費用、大規模修繕の注意点

※本記事は、2021年8月に公開したものを再編し、2026年4月に再公開したものです。

マンションの建物強度を維持するためには、「屋上防水」のメンテナンスが欠かせません。

マンションの屋上防水に多く採用されている工法が「シート防水」です。

しかし、マンション管理組合様の中には、「劣化のサインがわからない」「防水工事の選定で失敗したくない」「修繕積立金を適切に活用したい」「どのような施工会社に相談すればいいか判断できない」とお困りの方が多いのではないでしょうか。

建物寿命を伸ばすためには、屋上防水の劣化サインや工法の特徴と種類を知ることが重要です。

そこで、今回はシート防水工事の特徴から工法の種類、基本的な工程、メンテナンス時期の判断基準について解説します。

大規模修繕の注意点や工事店選びのポイント、工事費用の目安など、多くの方からいただくよくある質問も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

コラムのポイント

  • マンションやビルの屋上に多く採用される「シート防水」は、耐久性に優れた方法ですが、経年劣化のサインを見過ごすと、雨漏りなど深刻な事態をもたらします。

  • マンション管理組合様やビルのオーナー様は、シート防水の基本知識と工法別のメリット・デメリット、劣化サインを事前に把握しておくことが重要です。

  • シートの破断や膨れなどを見つけた際に、DIYで無理にメンテナンスすると、雨漏りなどを助長する恐れがあります。

 

シート防水とは|メリットとデメリット

シート防水とは|メリットとデメリット

シート防水とは、屋上下地の上に塩化ビニール製もしくはゴム製の防水シートを敷き詰めて固定する工法です。

防水シートの素材によって、以下の種類に分類されます。

  • 塩ビシート防水(塩化ビニル樹脂系シート)
  • ゴムシート防水(加硫ゴム系シート)
  • TPEシート防水(熱可塑性エラストマー系シート)

防水シートの厚さは1.5〜2.5mm程度あり、軽歩行に耐えられるだけではなく、広い範囲を短時間で施工できるため、ビルやマンションの屋上に多く用いられます。

メリット

シート防水の中でも塩ビ系シートを用いる工法のメリットは、主に施工性と品質安定性にあります。

  • 改修の際に、下地を限定しない(既存防水層の上からシートをかぶせるため、既存防水材との相性は関係なく、施工できる)
  • 塗料のみを用いる工法と異なり、工場生産のシートを用いるため、施工品質のムラが生じにくい
  • 耐用年数が長い(ウレタン塗膜防水と比べて長寿命で、防水シートの耐用年数は15〜20年程度)
  • 水たまりができても部分劣化しにくい(ウレタン塗膜防水は、下地の不陸によって水たまりができると、塗膜が劣化しやすいが、塩ビ系シート防水は性能劣化につながりにくい)
  • 工期が短い(工場生産のシートを敷き込むため、ウレタン塗膜防水よりも短期間で広い面積を施工できる)
  • 品質が工事中の気温に左右されない(ウレタン塗膜防水は、気温や湿度によって硬化に影響が出る可能性がある)
  • トップコートの定期的な再塗装が不要(メンテナンスコストを削減できる)

デメリット

防水塗料を用いる工法と比べて、塩ビ系シート防水は施工性や耐久性に優れていますが、デメリットもあるため注意が必要です。

  • 複雑な形状の施工場所に適さない(シートの細かい切り欠き加工が困難、隙間ができると漏水リスクが高くなる)
  • 機械を用いる工法は、工事中に騒音が発生する可能性がある

塩ビ系シート防水の工法種類|工期・耐用年数の違い

シート防水の工法種類

塩ビ系シート防水には、「接着工法」と「機械的固定工法」があり、それぞれ特徴や費用・耐用年数の目安は異なります。

接着工法

接着工法とは、 屋上のコンクリート躯体に、防水シートを直接接着剤で貼り付ける方法です。

シートとシートの継ぎ目は、専用の溶着材を用いて熱処理するため、高い防水性を確保できます。

メリット
  • バルコニーなど狭いスペースでも施工可能
  • 施工中に大きな音が出ない
  • 機械的固定工法よりも費用が安い場合が一般的
  • 工期が短く、歩行頻度が高い場所や紫外線・鳥害の影響を受けやすい場所にも適している
デメリット
  • 下地の湿気による影響を受けやすい(水蒸気によるシートの膨れが発生すると、防水性能が低下する)
  • 下地の影響を受けやすい(下地が劣化していると、調整に費用と日数がかかる)
  • 下地(構造躯体)と密着するため、建物の揺れなどによってシートが破断するリスクが高い
費用目安
(平米単価)
6,000〜7,000円/㎡(施工面積と仕様によって異なる)
耐用年数 12〜15年程度(一般的な均一シートの場合)

機械的固定工法

機械的固定工法

「機械的固定工法」とは、別名「脱気工法」や「絶縁工法」とも呼ばれ、固定ディスク(円盤状のパーツ)で防水シートを下地に固定します。

下地に接着剤を用いてシートを直接貼る方法とは異なり、たとえ下地が劣化していても影響を受けにくく、湿気なども脱気筒から排出することが可能です。

メリット
  • 下地が劣化していても、影響を受けにくい(シートを下地全面に貼り付けないため)
  • 既存シート防水の上にかぶせ(カバー)工法できる
  • 脱気筒によって、下地から上がる湿気を排出でき、シートの膨れを防止できる
  • 下地(構造躯体)と密着しないため、建物の揺れなどによる力をある程度受け流せる(接着工法よりも破断するリスクが低い)
デメリット
  • 固定ディスクの設置スパンが決まっているため、バルコニーなどの狭いスペースには施工できない
  • 施工中に大きな音が出る
  • 接着工法より費用が高くなる可能性がある
  • 接着工法より工期が長くなる可能性がある
費用目安
(平米単価)
6,500〜7,500円/㎡(施工面積と仕様によって異なる)
耐用年数 15〜18年程度(一般的な均一シートの場合)

 

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塩ビ系シート防水の工法を選ぶポイント|接着工法と機械的固定工法の違い比較

シート防水の工法を選ぶポイント|接着工法と機械的固定工法の違い比較

現場ごとに、接着工法と機械的固定工法のどちらが適しているか施工会社の判断に任せる場合が原則ですが、それぞれの違いを知ることで、大規模修繕の失敗を未然に防げます。

接着工法

【防水層の構成】

  • 既存下地
  • プライマー・樹脂モルタル
  • 接着剤
  • 防水シート
  • 接合部・端末部のシール

【工期】

【費用】

◎(安価)

【施工に適さない場所】

  • 既存防水層がある場合
  • 湿気の多い場所や下地の劣化が進んでいる場所
  • 既に雨漏りしている場所

 

機械的固定工法

 【防水層の構成】

  • 既存下地
  • プライマー・樹脂モルタル
  • 絶縁シート
  • 固定ディスク
  • 防水シート
  • 接合部・端末部のシール

※使用する防水シートによって脱気筒を設置する場合も

【工期】

◎(接着剤の乾燥時間が不要なため短期間)

【費用】

【施工に適さない場所】

  • 騒音問題が起こりそうな密集地など
  • バルコニーなど狭い場所の改修

 

最近では下地の影響を受けにくく短期間で工事が完了する「機械的固定工法」が主流です。

ただし、予算が少ない場合など、現場の状況などによって接着工法を提案される場合もあるため、施主様側も双方の工法を理解しておくことが重要になります。

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塩ビ系シート防水のメンテナンス時期と劣化サイン|屋上防水の点検目安

塩ビ系シート防水のメンテナンス時期と劣化サイン|屋上防水の点検目安

塩ビ系シート防水のメンテナンス周期は工法によって異なりますが、10〜15年ごとに専門家による点検を実施し、12〜15年程度に一度大規模修繕する計画が基本です。

(参考:国土交通省|長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 長期修繕計画作成ガイドラインコメント

※建物の大規模修繕計画については「マンションの大規模修繕は何年ごとがベストか|ガイドライン・目安年数と工事時期を決める方法、減税・補助金を解説」を併せてご覧ください。

それ以外でも、塩ビ系シート防水の劣化サインを見つけた場合は、迅速な対応が必要になります。

主な劣化サイン

塩ビ系シート防水の主な劣化サインは5つあります。

1つでも見つけた場合は、早めに防水の施工会社に詳細な調査を依頼しましょう。

防水シートの破断

防水シートの破断

鋭利なものがぶつかれば、丈夫な防水シートでも傷がついて破断してしまう可能性があります。

小さな破断でもそこから雨水が侵入して、広範囲に広がるため、早急なメンテナンスが必要です。

施工会社であれば部分張り替えも可能なため、他の部分の劣化がなければ全体を改修する必要はありません。

防水シート立上り部端部の剥がれ

防水シート立上り部端部の剥がれ

防水シートの立上り部端部は、専用金物で押さえてあっても、シートのめくれによって浮いてくる場合もあります。

気付きにくい現象ですが、端部からは水が入りやすいため、定期的に点検を行い、被害が大きくなる前に処置することが必要です。

防水シートのジョイント部劣化

紫外線や雨風の影響を受けやすい場所で、防水シートのジョイント部(継ぎ目)の溶着が劣化すると、隙間が開いてくる場合があります。

シート自体に破断などの問題がなくても、継ぎ目から水が侵入してしまうので注意が必要です。

防水シートの膨れ

防水シートの膨れ

防水シートの膨れは、接着工法の場合に発生する現象です。

機械的固定工法は脱気筒によってシート下の湿気を逃がすことができます。

しかし、接着工法は元々コンクリートに含まれていた湿気や、どこかから侵入した雨水が熱で温められて水蒸気となり、それが原因でシートが部分的に膨らんでくる現象が起こります。

膨れを見つけた場合は、既にどこからか雨水が防水シートの下に侵入している可能性もあるため、速やかに調査を依頼しましょう。

膨れ箇所も、部分的破断と同様に施工会社であれば部分張り替えも可能です。

ただし、部分補修では根本的な解決にはならず再発の恐れもあるため、膨れを見つけた段階で機械的固定工法に全面変更することもご検討ください。

防水シートの硬化・収縮

日射熱を直接受ける屋上において、防水層は常に温度による影響を受けやすい状況にあります。

そのため、いくら耐久性の高い塩ビ系シート防水でも、表面が変色したり硬化して細かい亀裂が発生したりするケースも珍しくありません。

塩ビ系シート防水材は紫外線の影響だけではなく、経年劣化により硬化・収縮するため、このような現象が見られる場合には全体的な改修が必要です。

屋上防水の劣化サインを少しでも見つけたら、速やかに防水工事の専門家へ建物診断を依頼しましょう。

関東防水管理事業協同組合(関防協)では、防水改修調査診断員が無料で現地に出向いて調査・診断する「無料訪問診断」と、屋上防⽔の改修費⽤を補助する「バリュープラスキャンペーン」を実施しております。

「屋上防水の劣化が進んでいるか心配」「まずはプロの診断を聞きたい」という方は、お気軽に私たちまでご相談ください。

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関防協|無料訪問診断

関防協|バリュープラスキャンペーン

防水改修診断のお問い合わせ

 

マンションの大規模修繕は「かぶせ工法」がおすすめ

マンションの大規模修繕は「かぶせ工法」がおすすめ

マンションやビルの大規模修繕に伴い、初めて屋上の塩ビ系シート防水を改修するには、「かぶせ工法」をおすすめします。

塩ビ系シート防水の改修方法には、撤去工法・かぶせ工法の2種類がありますが、短期間・低コストで高い施工品質を実現できる改修に特化した方法が「かぶせ工法」です。

撤去工法
  • 既存防水層を撤去し、新築時の下地に新規防水層を施工する工法
  • 既存撤去の際に騒音、振動が発生する
  • 撤去工事期間分工期が長引く
  • 撤去工事、廃材処分費がかかる
  • 撤去後に防水層施工前の漏水への配慮が必要
かぶせ工法

既存防水層の不良部のみを除去し、適切な下地処理を施した上で、新規防水層をかぶせて施工する工法

接着工法であれば、騒音や振動は少ない

撤去工法に比べ工期を短縮できる(撤去作業が不要)

撤去工法に比べ安価

接着工法であれば、既存の防水性能も期待できる(防水層が二重になる)

機械的固定工法であれば、既存防水層との相性を考慮せずに採用が可能

 


これらの違いから、最近では多くのマンション・ビルの大規模修繕には、「かぶせ工法」が採用されています。

ただし、現状によってはかぶせ工法ではなく撤去工法でなければ改修できない場合もありますので、詳しくは施工会社にご相談ください。

※かぶせ工法の詳細は「防水改修3工法の比較」を併せてご覧ください。

雨漏りしても慌てない!防水工事の工法や業者の選び方を紹介

屋上のシート防水に関するよくある質問

屋上のシート防水に関するよくある質問

ここでは、多くの方からいただく「マンションの大規模修繕工事」に関するご質問を紹介します。

Q.シート防水はDIYで補修できる?

A.シート防水は継ぎ目がないシートによって雨漏りを防ぐため、一般の方が部分撤去すると、深刻な事態に発展する可能性があります。

シート防水はシートを連結して大きな防水層を形成しているため、一部でも傷をつけてしまうと、雨漏りなどがひどくなるリスクがあります。

また、シートの破断部分をシーリング(コーキング)で埋める方法を取る方もいらっしゃいますが、下地への影響を悪化させる可能性があるため、部分撤去と同様におすすめしません。

DIYで応急処置をしたい場合は、破断している部分にビニールシートを被せるなど、防水シートそのものには触れない方法で応急処置をして、速やかに専門家へ相談してください。

※雨漏りの応急処置方法を知りたい方は「アパート・マンションやビルで雨漏り!その原因や対処方法を解説」をご覧ください。

Q.他の屋上防水から、塩ビ系シート防水に改修できる?

A.既存の屋上が「保護コンクリート仕上げ」の場合のみ、かぶせ工法による塩ビ系シート防水への改修が可能です。

それ以外の「露出アスファルト防水」や「ウレタン塗膜防水」は、既存防水層の撤去をした上であれば、塩ビ系シート防水に変更できる可能性がありますので、詳しくは施工会社などにご相談ください。

Q.屋上防水の改修で使える補助金や減税制度はある?

A.マンションやビルで屋上を防水改修した場合には、自治体による補助事業かリフォーム促進税制を利用できる可能性があります。

【自治体の補助金・助成金】

都道府県・市区町村単位で、独自の補助金や助成金を設けているところもありますので、工事の前に使える制度があるか確認しましょう。

例えば、東京都では分譲マンションの大規模修繕工事を対象に、「マンション改良工事助成」を実施しており、共用部分の外壁塗装・屋上防水やバリアフリー化などを実施する際に融資を利用する場合、都が利子分の金額を補給します。

(参考:東京都|マンションポータルサイト|分譲マンションの修繕への助成(マンション改良工事助成制度)

【リフォーム促進税制】

マンションの大規模修繕に伴い、バリアフリー・省エネ化・長期優良化にかかわる改修工事を実施した場合、区分所有者個人の所得税と家屋分固定資産税の減額を受けられる可能性があります。

(参考:国土交通省|リフォーム促進税制(所得税・固定資産税)の概要

ただし、区分所有者ごとに税申告するため、増改築等工事証明書は世帯数分必要です。

※戸建て住宅の改修で利用する場合と減税対象の工事費用算定方法と対象要件が異なるため、詳細は管轄の税務署までご確認ください。

(参考:国土交通省|よくあるご質問|リフォーム促進税制|Q47

Q.防水改修の工事店を選ぶポイントは?

A.建物の無料診断に対応できる施工会社を選びましょう。

「どこに診断を依頼すればいいかわからない」という方は、関東防水管理事業協同組合(関防協)までお問い合わせください。

当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計192社の正会員がおります(2026年1月時点)。

防水改修調査診断員」による建物調査のご相談も承っておりますので、安心してマンション・ビルの防水改修計画をお任せいただけます。

当HPではマップ上での施工店検索もできますので、ぜひそちらもご活用ください。

関防協|組合員(施工会社)の検索マップ

関防協|無料訪問診断

防水改修診断のお問い合わせ

 

まとめ

マンションやビルの屋上に多く採用される「シート防水」は、耐久性に優れた方法ですが、経年劣化のサインを見過ごすと、雨漏りなど深刻な事態をもたらします。

そのため、マンション管理組合様やビルのオーナー様は、シート防水の基本知識と工法別のメリット・デメリット、劣化サインを事前に把握しておくことが重要です。

シートの破断や膨れなどを見つけても、DIYで無理にメンテナンスせずに、速やかにプロへ相談することをおすすめします。

「どこに連絡していいか分からない」という方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合のネットワークで信頼できる施工会社を探してみてください。

関防協|組合員(施工会社)の検索マップ

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関東防水管理事業協同組合事務局

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日々進化する防水工法や現場のニーズに合わせた最適な対応を行うため、施工技術者の育成にも取り組んでいます。
当サイトでは、マンションなどの一般住宅から店舗、大型ビルなど、さまざまな現場を見てきた防水のプロが豊富な知識と経験を活かして防水工事についてわかりやすく解説します。

主な資格
建築士 コンクリート診断士 宅地建物取引士 防水改修診断員

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