防水工事における下地処理の重要性と目的|不十分な下地処理が引き起こす問題とは
建物の耐久性を確保するうえで、防水工事における下地処理は非常に重要な工程です。
下地処理を適切に行わないと、防水層の剥がれや膨れなどの不具合発生の原因となります。
一方で、下地の種類や状態に合わせて処理すると、防水層の密着性が確保できます。
本記事の解説ポイントは、以下の通りです。
・防水工事に必要な下地処理の手順を解説します。
・下地処理に使用される材料と選定のポイントをお伝えします。
建物の寿命を伸ばし、雨漏りなどのトラブルを避けるために、ぜひ参考にしてください。
Contents
防水工事における下地処理の重要性と目的
建物の防水工事において、下地処理は非常に重要な工程です。
建物の屋上は、表面が平らではなく細かな凹凸があり、平らに整えておかないと建物と防水層の隙間に空気や雨が入って密着が悪くなり、防水をうまく施工できません。
適切な下地処理を行わないと、防水層の剥がれや膨れなどの問題を引き起こす可能性があります。
下地処理の主な目的は、以下の2点です。
- 下地の清掃と補修:下地に付着した汚れや古い防水層の残りかすなどを取り除き、クラックを補修することで、防水層との密着性を高めます。
- 下地の平滑化:下地の凹凸を調整し、平らな面を作ることで、防水層の厚みを均一に保ち、防水性能を向上させます。
適切な下地処理をすることで防水層の密着性が高まり、建物を水の浸入から守れます。
下地処理とは何か
下地処理とは、防水層を施工する前段階で下地の清掃や補修、下地を平らにする作業のことを指します。
具体的には以下のような作業が含まれます。
- 高圧洗浄:下地に付着した汚れや油分、古い防水層の残りかすなどを高圧水で洗い流します。
- ケレン:下地の浮いた部分を削り、除去します。
- 補修:クラックや欠けた部分にモルタルや補修材を充填し、下地を平らにします。
- 伸縮目地の処理:既設の伸縮目地材を撤去し、新たに目地処理を行います。
- 下地調整:凹凸のある下地にモルタルや下地調整材を塗布し、平らな面を作ります。
これらの作業を適切に行うことで、防水層との密着性が高まり、防水性能の向上につながります。
また下地処理の方法は防水工法や下地の種類によって異なるため、それぞれに適した方法で処理しましょう。
下地処理が不十分な場合に起こりうる問題
下地処理が不十分な場合、以下の問題が発生する可能性があります。
- 雨漏り:防水層と下地の密着性が低いと雨水が防水層の下に侵入し、雨漏りする恐れがあります。
- シート防水の場合のシートの剥がれ:下地の凹凸が大きいと、シート防水材が下地に密着せず、剥がれや膨れの発生につながります。
下地処理を怠ると、せっかく施工した防水層も長持ちせず、早期に改修が必要になってしまいます。
建物を長期的に守るためにも、下地処理は重要な工程です。
適切な下地処理を施工する防水業者に依頼しましょう。
防水下地処理の手順と作業内容
防水工事における下地処理は、以下のような手順で行われます。
- 高圧洗浄
- 既存防水層の不具合箇所の撤去
- ケレン
- クラック補修
- 伸縮目地の処理
- ドレン廻り補修
- 下地調整
それぞれの作業内容を詳しく見ていきます。
1. 高圧洗浄
最初の工程は高圧洗浄です。
高圧洗浄機を使用して、下地表面に付着した汚れや油分、旧防水層の残りかすなどを洗い流します。
高圧洗浄によって、下地の清浄度が高まり、新しい防水層との密着性が向上します。
2. 既存防水層の不具合箇所の撤去
既存の防水層の劣化が激しい場合は、既存の防水層を撤去することがあります。
昨今は完全に撤去するのではなく、既存防水層の上に新しい防水層を重ねる「かぶせ工法」が主流です。
かぶせ工法では、下地の状態に応じて部分的に既存の防水層を撤去し、新しい防水材と適合するように下地を調整します。
防水のかぶせ工法については、こちらで解説しています。
3. ケレン
ケレンとは、下地表面の浮いた部分を、スクレーパーなどの工具を使ってはつり取る作業のことです。
ケレンによって下地の弱っている部分を除去し、健全な下地面を露出させることで、防水と下地の密着度を高めます。
4. クラック補修
下地にクラック(ひび割れ)があると、防水性能を大きく低下させるため補修が必要です。
クラックの幅や深さに応じて、クラック部分をカットしてシーリング材を充填するなど、補修方法が異なります。
補修材を充填した後は、表面を平らに仕上げます。
5. 伸縮目地の処理
押さえコンクリート仕上げの場合、コンクリートの熱挙動による膨張、収縮で亀裂やひび割れが発生するのを防ぐ目的で、一定区画ごとに伸縮目地が設置されています。
伸縮目地材は経年劣化により収縮性が低下するため、防水改修時には既設目地材を撤去し、新たに伸縮目地処理を行う必要があります。
6. ドレン廻り補修
ドレン(排水口)周辺は、防水層の端部になるため、雨漏りが起こりやすい箇所です。
ドレン廻りの古い防水層や劣化部分を除去し、ドレン本体との取り合いを補修材で補強します。
ドレンの劣化が激しい場合は、元々のドレンの上にかぶせて使用する改修ドレンを使用するケースが多いです。
7. 下地調整
下地調整は、防水層を施工する直前の重要な工程です。
下地の種類や状態に応じて、以下の方法で下地を調整します。
- ノロ引き:セメントや樹脂を混ぜ合わせたポリマーセメントモルタルを下地表面に薄く塗布し、防水層との密着性を高めます。
- ポリマーセメントモルタルの金ゴテ仕上げ:コンクリートやモルタル仕上げ面に、ポリマーセメントモルタルを1mm以上の厚みで金ゴテで塗布することで、平らな防水下地を作ります。
それぞれの工程を適切に行うことで、防水層の性能を最大限に発揮させられます。
防水下地処理に使用される材料と選定のポイント
ここでは、防水の下地処理に使用する主な材料の種類と選び方について解説します。
下地調整材の特徴
下地調整材は下地の凹凸を補修し、防水層の密着性を高めるために使用します。
代表的な下地調整材には、主に以下の2つがあります。
- ゴムアスファルト系:アスファルト防水に使用できます。厚く塗れるので凹凸を平らにするのに適しています。
- SBR系・エポキシエマルション系:アスファルト防水以外に、シート防水やウレタン防水にも使用できます。
下地調整材は、防水の種類や損傷の程度に応じた選定が必要です。
また、工事期間中の仮の防水として機能する製品もあります。
屋上防水の種類と耐用年数については、こちらで解説しています。
クラック補修工法の種類
クラックは雨水の侵入経路になるため、確実な補修が必要です。
クラックの幅や深さに応じて、以下の工法があります。
- ポリマーセメントモルタル塗布:0.3mm以下の細いクラックであれば、クラック表面にポリマーセメントモルタルを塗って処理します。
- Uカットウレタンシーリング処理:0.5mm以上のクラックは、クラック部分を工具でU又はVカットして、ウレタン系シーリング材などを充填して仕上げます。
クラックの大きさに合わせて、適切な補修材の選定が重要です。
伸縮目地材の処理方法
防水改修工事で、既設伸縮目地材の撤去後に行われる伸縮目地の処理方法には、以下の2つがあります。
- バックアップ材入れ・ウレタンシーリング材充填処理:伸縮目地の処理方法として最も一般的な処理方法ですが、施工後にシーリング材の肉やせにより、目地部に凹みが発生することがあります。
- アルミ製目地キャップ(メジパス)貼り:既設目地材撤去後、目地部に厚み0.8mmのアルミ製キャップをウレタンシーリング材で貼りつけます。伸縮目地部の通気性に優れ、肉やせもありません。
適切な伸縮目地処理を行うことで、建物の動きに追従して、長期的な防水性能の維持にもつながります。
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防水工事において、下地処理は防水層の耐久性を大きく左右する重要な工程です。
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