シート防水補修の注意点や劣化サイン|費用・全面改修の判断ポイントも紹介
シート防水の劣化が進み、補修が必要になった際に、「部分補修で済ませるか」「全面改修すべきか」で悩む方は少なくありません。
ご自身で判断すると、かえって雨漏りの悪化や余計なコストの発生につながる恐れがあります。
本記事では、シート防水補修の注意点や見極めるべき劣化サイン、部分補修と全面改修の判断ポイントを分かりやすく解説します。
費用を抑えながら適切な対処法を選ぶコツもご紹介しますので、修理の判断で後悔しないために、ぜひ参考にしてください。
・寿命が近いシートへの部分補修やDIYは、後悔の原因になるため避けましょう。
・シート防水の膨れや破れなどの劣化サインを見つけたら、早めに専門業者へ相談するのがポイントです。
Contents
シート防水の補修で後悔しないためのポイント
シート防水補修の検討において大切なのは、目先の費用だけでなく、長期的な視点で判断することです。
ここでは、後悔しないために知っておきたい基本的な考え方をご紹介します。
【大前提】シート防水の耐用年数を確認する
まず確認すべきは、現在施工されているシート防水の「耐用年数」です。
シート防水(合成高分子系シート防水)には「塩ビシート」と「ゴムシート」の2種類があり、耐用年数は13〜15年といわれています。
これらの年数はあくまで目安であり、立地環境やメンテナンス状況によって変動します。
補修か全面改修かを判断するうえで、この耐用年数が一つの基準になります。
なぜ寿命が近いシートの部分補修はおすすめできないのか
耐用年数が近づいているシート防水の部分補修は、根本的な解決にならないケースが多く見受けられます。
耐用年数が近い防水層は、シート全体が紫外線や熱で硬化し、脆くなっています。
一か所の破れを補修しても、すぐに別の場所が破れたり、剥がれたりしやすい状態です。
補修を繰り返すと、その都度、人件費や材料費がかかります。
一回あたりの費用を抑えられても、積み重なると全面改修よりも高額になってしまうケースは珍しくありません。
長期的な視点で考えると、寿命が近いシートは全面改修した方が経済的です。
補修か全面改修|耐用年数から見る判断基準
部分補修で済むか、全体的な改修工事が必要になるかは、シート防水の寿命がどれくらい残っているかと、傷みの広がり具合を合わせて考えるのがポイントです。
経過年数 | 判断基準(劣化の症状) | おすすめの対応 |
---|---|---|
施工して数年 | 飛来物による穴など、局所的な損傷の場合 | 部分補修※ |
耐用年数の半分程度 | 軽微な劣化が複数見られる場合 | 専門家による診断のうえで判断 |
耐用年数に近い | 全体的な硬化、複数の破れや浮きなどが見られる場合 | かぶせ工法・撤去工法 |
※部分補修:補修工事は(防水保証の見地から)必ず施工業者に依頼する
耐用年数が残りわずかで劣化が広範囲に及んでいるなら、全面改修の検討がおすすめです。
【症状別】放置してはいけないシート防水の劣化サイン
シート防水に以下のサインを見つけた場合は、劣化が進んでいる証拠のため、早めに専門家へ相談しましょう。
- 雨漏り
天井や壁にシミができている場合、すでに防水層が機能していない状態です。
雨漏りは建物の構造体である鉄筋や鉄骨を錆びさせ、強度を著しく低下させるため、最優先で対応が必要です。
- 膨れ
防水シートの下に湿気や空気が入り込み、太陽熱で温められて膨張することで発生します。
膨れを放置すると、歩行や飛来物によって簡単に破れてしまい、雨漏りの原因となります。
- 破れ、ひび割れ
紫外線によるシートの硬化や、飛来物が当たることで発生します。
小さな破れやひび割れでも、雨水浸入の原因になります。
- 収縮、突っ張り
シートを固定している接着剤の劣化や、経年劣化により、シート材が硬化収縮したり突っ張りが認められる現象です。
屋上の立上り部やコーナー部に発生しやすく、シート同士の接合部(ジョイント部)の口開きから雨漏りにつながる危険があります。
- 水たまり
雨が降った後、長時間水たまりができる場合、排水ドレンの不具合や下地不陸によるものなどが考えられます。
常に水が溜まっている場所は、シートの劣化を早める原因となるため、早めの対処が求められます。
- 雑草が生えている
防水シートのわずかな隙間に土埃が溜まり、そこに草が生えてきている状態です。
雑草の根が防水層を突き破り、雨水の浸入口を作ってしまうため、見つけ次第、防水業者に相談しましょう。
雨漏りの放置によって起こりうるリスクについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
シート防水劣化の適切な対処法|応急処置と根本解決
ここでは、劣化サインを見つけた場合の対処方法を「応急処置」と「根本解決」に分けてご紹介します。
【耐用年数内が前提】応急処置としての部分補修
まだシート防水の寿命が十分に残っていて、傷んでいる箇所がごく一部の場合に限り、部分的な補修で対応可能ですが、その場合には必ず施工業者へ依頼する必要があります。
防水の瑕疵保証(通常10年)期間内に、個人や他業者が補修を行うと保証が切れてしまうため注意してください。
- シートの膨れ・口開き(結合部)の補修
膨れ部を切開し下地を清掃・乾燥させた後、専用の接着剤を再塗布して圧着します。
シートのつなぎ目が口開きしている場合は、200mm以上の重ね幅でシート材を増し貼り(溶着材・熱風溶接などによる)補修を行います。
寿命が近いなら「全面改修」がおすすめ
防水層の寿命が近づいてきたり、傷みが全体に広がってきたりした場合は、この先も長く安心してお過ごしいただくために、一度リセットする全面改修がおすすめです。
何度も補修を重ねるより、結果的に費用も抑えられます。
全面改修には、「撤去工法」と「かぶせ工法」の2つの工法があります。
- 撤去工法
既存の防水シートをすべて撤去し、下地を清掃・補修したうえで、新しい防水シートを施工する工法。
下地の状態を直接確認し、劣化があれば補修できる点がメリット。
- かぶせ工法(カバー工法)
既存の防水シートを撤去せず、上から新しい防水シートをかぶせて施工する工法。
下地の状態が比較的良好な場合に採用できる。
かぶせ工法は、多くの現場で採用されている工法ですが、メリットとデメリットを理解しておくことが大切です。
かぶせ工法のメリット
- 既存シートの撤去費用や廃材処分費がかからず、コストを抑えられる。
- 工期を短縮できる。
- 騒音や粉塵の発生が少ない。
かぶせ工法のデメリット
- 既存防水層の下地の状態を直接確認できない。
- 建物の重量が重くなる。
- 下地の劣化が激しい場合や、すでに雨漏りが発生している場合は採用できない。
シート防水のDIY補修をおすすめしない3つの理由
「少しの破れくらいなら自分で」とDIYでの補修を考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、防水工事は専門性が高く、DIYは以下3つのリスクを伴います。
見よう見まねの補修は雨漏りを悪化させるリスクがある
防水業者は、症状だけでなく、根本原因を突き止めてから施工します。
しかし、専門知識のない方が原因を正しく特定するのは困難です。
例えば、シートの破れが原因だと思って補修しても、本当の原因が別の場所にあれば雨漏りは止まりません。
補修材の選定ミスや施工不良は、新たな水の浸入口を作ってしまい、かえって雨漏りを悪化させてしまいます。
DIYで補修を繰り返すと、防水業者でも雨漏りの原因箇所を特定するのが難しくなり、調査費用が余計にかかる場合もあります。
専門知識と技術がなければ防水性能を発揮できない
シート防水の性能を引き出すには、専門的な知識と熟練の技術が不可欠です。
防水シートには多くの種類があり、それぞれに適したプライマーや接着剤、補修材が必要です。
高所作業には転落などの危険が伴う
屋上での作業は、常に転落の危険が伴います。
防水業者は、安全管理を徹底して作業を行いますが、一般の方が同じレベルの安全対策を行うのは困難です。
万が一の事故リスクも想定し、安全のためにも、作業は専門業者に任せましょう。
シート防水の補修Q&A
シート防水の補修について、関防協がよくいただく質問とその回答を紹介します。
Q1. どんな症状が出たら補修のサインですか?
A. 雨漏りや、シートの「膨れ・破れ・収縮・浮き・突っ張り」は、分かりやすい劣化サインです。
「水たまりが消えにくい」「雑草が生えている」といった症状も、防水機能が低下しているサインですので、見つけ次第、専門家に点検を依頼しましょう。
Q2. 小さな劣化なら部分補修で済みますか?
A. シート防水の耐用年数がまだ十分に残っており、劣化が飛来物による穴など局所的なものであれば、部分補修で対応できる場合があります。
しかし、耐用年数が近づいている場合は、小さな劣化に見えてもシート全体が脆くなっている可能性があり、部分補修をしてもすぐに別の場所から雨漏りしがちです。
専門家による診断を受け、長期的な視点で経済的な方法を選びましょう。
Q3. 信頼できる専門業者を見つける方法は?
A. 安心して工事を任せられる優良業者を見分けるには、以下のポイントがあります。
- 建物診断をしてくれるか
- 地域の防水専門工事業者の団体に加盟しているか
- シート防水工事の実績が豊富か
- 値段勝負をしないか
- 見積書の内訳が分かりやすいか
- 現場管理体制が整っているか
- 工事後の保証がしっかりしているか
これらをチェックすることで、技術力と信頼性の高い業者を選べます。
安心して任せられる業者をお探しの方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
関防協は、防水工事の「エキスパート集団」です。
工事会社を選ぶのに不安を感じる方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合(関防協)へまずはお気軽にご相談ください。
当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計192社の正会員がおります(2025年7月時点)。
また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。
「雨漏り診断をどこに依頼すれば分からない」「信頼できる施工会社の選び方が分からない」そんな方は関東防水管理事業協同組合へご相談ください。
当HPでは、防水改修調査診断員による無料診断も申し込みや、マップ上での施工店検索ができます。 少しでも防水に不安や不満を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。