防水工事の見積書は“単価”だけで判断しては危険
チェックポイントや見方を徹底解説

見積書

本格的な梅雨シーズンを控え、ご自宅やお持ちの不動産に関して「防水が心配…」という人や、実際に既に施工会社へ相談して準備中という人もいるかもしれません。

しかし、防水工事の見積書は専門用語だらけで見慣れた人でないと本当に理解するのは難しいでしょう。

そこで、今回は防水工事見積書の見方や判断ポイントについてお話しします。ご自宅や所有不動産の防水が気になる人は、ぜひ参考にしてください。

このコラムのポイント
●防水工事の見積書は専門用語が多く分かりづらいが、チェックポイントさえ押さえれば失敗しません。
●工事価格だけではなく、契約条件やアフターメンテナンスなどを踏まえて総合的に判断しましょう。
●関東防水管理事業組合では、信頼できる登録業社が検索できます。




防水工事の見積書は“業者選び”の重要ポイント

防水工事の見積書は、他の内装工事などと比べても聞き馴染みのない用語が多く、一般の方では「どんな工事をするのか」すら理解するのが難しく、果たして適正な内容なのかを精査することすら難しいかもしれません。

そのため、質に見合う価格よりも高いコストが掛かってしまったり、施工後に後悔してしまうケースは決して少なくないでしょう。

しかし、見積もりのポイントさえチェックすれば、何も全てもプロ並みに理解する必要はありません。大切なのは、見積もりから工事の概略を読み取ったり、その施工業者の現場に対する“姿勢”を判断すること。

単価や工事総額だけで施工会社を比較すると、思わぬ失敗をしてしまうこともあります。ですから、金額だけではなく見積書の内容や、見積書を併せて提出される資料を見て、総合的に業者選定をすることが重要なのです。



見積書の見方やチェックポイントは?

見積書見方

見積書はよくわからない専門用語が並び、一体どこか重要なのかが分かりにくいでしょう。建物規模や工事規模が大きくなればなるほど、その内容は膨大になり、その全てを100%把握するのは至難の業です。

そこで、ここでは主にチェックすべきポイントを紹介します。


ポイント① 工事内容や仕様を確認する

まず、最初に工事内容をチェックしましょう。書式上、簡易的にしか書かれていないことが多いため、必ず見積書の説明を受ける際、どのような工事を行うかを確認してください。

また、摘要欄などに、使う材料のメーカーや商品名が記載してあったり、工法名が書かれている場合もあるので、そちらも見落とさないようにしましょう。

専門的な用語が多いため、無理にご自身で調べようとせずに、ざっくばらんに分からないところを聞き、使用する材料のカタログなどを貰っておくこともポイントです。

そうすることで、後から再度防水工事を行う際の参考資料になります。

一口メモ
見積書の備考欄に「材工共」や、「材のみ」「工のみ」という表記がある場合があります。あまり聞き馴染みのない言葉なので、意味を理解しておきましょう。
材工共・・・材料費及び施工費の合算
材のみ・・・材料費のみ
工のみ・・・施工費のみ


ポイント② 数量を確認する

工事内容の大枠を理解したら、次は数量をチェックしましょう。

図面や現地の状況である程度ボリュームが分かる場合は、実際に計算してみるのがおすすめです。どれか一つでも面積が分かれば、その会社がどれほどの制度で数量を算出しているかの参考になります。

ただし、複雑な形状の場合は作業効率が落ちるため、多少数量を多くする場合もありますし、少量の場合は面積などではなく「一式」で計上すること一般的です。

ですから、「数量が現地と少量違う」=「良心的な会社ではない」という訳ではないため、数量についても疑問に感じたことは必ず早めに確認しましょう。調べた相場と大きく金額が異なる場合でも、その数字の根拠を必ず確かめて、業者選定の参考にしてください。

ポイント③ 備考欄なども確認する

見積書は工事内容と数量だけは全てではありません。実は、備考欄などにも重要なことが書かれている場合があります。チェックすべき主なポイントは下の通りです。

〈支払い条件〉

少額の場合や「防水工事」単独発注の場合は、完了後に一括支払いする場合が一般的です。ただし、支払い条件は規模や工事内容によって異なる場合がありますので、必ず見積もり段階で確認しましょう。

〈見積もり有効期限〉

大抵の見積書には「有効期限」があります。なぜなら、経済情勢によって材料費や人件費は変動するためです。

ですから、何年も前にとった見積書を引き合いに出しても意味がないので注意しましょう。

〈別途工事の有無〉

備考欄に「別途工事○○」などと記載されている場合があります。これは、合計に必要となりうる工事やオプションの工事が含まれていないことを意味します。

例えば、都市部で工事車両が現場に停められない場合の駐車場代や、工事に使う電気・水道代、道路使用許可などの申請費用などがあります。

また、オプションではあるが一緒にやるといい工事が書かれていることもあるので、見積書は細部までくまなく確認しましょう。


ポイント④ 相見積とる

インターネットの様々なサイトでは、工事単価を紹介するものが多数あります。しかし、建築の難しいところは「ケースバイケースで金額が大きく変わる」という点です。相場と言われる値段もかなり幅があるため、一体どれくらいが適正価格なのか一般の方が判断することがかなり難しいでしょう。

そこでおすすめなのが「相(あい)見積もり」。

これは、同時に複数者に見積もりを出してもらうことで、適正価格だけではなく工事内容や現状の診断内容を比較するためにとても有効です。

「せっかく見積もりを出してもらったから気まずい」と思う人も多いですが、建築業界ではごく一般的なことなので、あまり気にする必要はありません。ただし、マナーとして一番最初の段階で複数者に相談していることを伝えることは必要です。また、A社の見積書を無闇にB社に見せることは止めましょう。

複数の見積もりが出揃った段階で、再度それぞれの会社へ疑問点を聞くと、さらに理解が深まります。



“工事単価”だけが比較項目ではない!金額以外の判断基準は?

ウレタン防水

建物の維持管理に係る費用は決して安くはないため、できるだけ安くしたいオーナー様が大半でしょう。しかし、工事金額が安いからといって施工会社を即決するのはとても危険です。

工事金額はあくまで業者選定基準の一要素であって、それが全てではありません。

必ずこれから紹介する3つのポイントについても十分確認し、トータルでどの会社にすべきかを判断しましょう。

その① 工事内容

相見積もりをとった場合、全ての会社が同じような工事内容を提案する場合もありますが、場合によってはそれぞれ異なる工法を提案するケースもあります。その場合は、その工法の特徴を確認して、工期や現場管理体制などと併せて検討しましょう。

特に、集合住宅やテナントビルなど借り手のいる建物の場合は、一定の期間「窓が開けられない」「作業員の出入りがある」などの支障をきたす場合もあります。これらの条件についても見積もり時から説明を受けて、リスク・コストと合わせた総合的な判断をしなくてはいけません。

提案された工事内容が適切かどうかを判断するために、とにかく疑問に思ったことは都度施工会社に問い合わせることが肝心です。

その② 保証内容・アフターメンテナンス

保証内容やアフターメンテナンス計画は、施工会社によってまちまちです。そのため、価格と併せてこれらについても確認しておくことは肝心です。

特に、防水工事のアフターメンテナンスは建物の長寿命化には欠かせない要素であるため、「工事が終わっておしまい」ではなく、完工・引き渡し後も引き続き長く付き合える会社を選びましょう。


その③ 契約条件

支払い条件や工事可能時期、引き渡し可能時期も会社選びのポイントです。見積書にそれらの情報についての記載がない場合は、“仮”工程表や契約書の見本も見せてもらいましょう。

また、工事請負契約には必ず「約款」がつきます。天災時や工事遅延時の対応などについて、契約を結ぶ際に双方が守らなくてはいけない事項が細かく記載されています。また、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)と呼ばれる工事に不具合があるときに是正してもらえる期間についても記載されており、とても重要なものです。

(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)

第五百六十六条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

引用:e-Gov法令検索|民法


心配な方は、これらについても早めに確認しても良いでしょう。ただし、基本的には約款は会社ごとで作成するものではなく、国で定められた内容が書かれています。(「一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会|住宅リフォーム工事請負契約約款」参照)



工事店やメーカーはどうやって選ぶ?

工事会社を選ぶのに不安を感じる方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合(関防協)へまずはお気軽にご相談ください。当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計191社の正会員がおります(2019年11月時点)。また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。

当HPでは、防水改修調査診断員による無料診断も申し込みや、マップ上での施工店検索ができます。ぜひお気軽にご活用ください。




まとめ|見積書は金額だけではなく中身を総合的にチェック

今回は、防水工事に関する見積書の見方について紹介しました。どうしても見積書を見る際には、真っ先に値段が目に飛び込んできます。しかし、価格だけで施工会社を選ぶことはあまりおすすめできません。

工事内容や契約内容、アフターメンテナンスなとの要素をトータルで見て、どこが信用できるかを見極めることがとても重要です。


私たち関防協では、現状の建物調査も承っております。「信頼できる業者がわからない」そんな方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合のネットワークで信頼できる工事店を探してみてください。都道府県別に登録業者を検索できるため、近くの工事店を簡単に見つけられます。少しでも防水に不安や不満を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。



運営者情報

関東防水管理事業協同組合事務局

関東防水管理事業協同組合事務局

建設防水業界トップシェアの田島ルーフィングが主催する、改修工事に特化した工事店ネットワーク。
日々進化する防水工法や現場のニーズに合わせた最適な対応を行うため、施工技術者の育成にも取り組んでいます。
当サイトでは、マンションなどの一般住宅から店舗、大型ビルなど、さまざまな現場を見てきた防水のプロが豊富な知識と経験を活かして防水工事についてわかりやすく解説します。

主な資格
建築士 コンクリート診断士 宅地建物取引士 防水改修調査員

関防協(関東防水管理事業協同組合)について