賃貸物件の雨漏りは大きなトラブルに|放置する危険性や対処フローを解説

アパートやマンション、テナントビルなどの賃貸物件において、借主との間で多いのが雨漏りのトラブルです。露呈するまで劣化に気づかないケースも多いため、オーナー様にとっては悩みの種でしょう。しかし、防水工事のポイントや劣化サインを知っておけば、トラブルに発展する前に対処できます。そこで、今回は賃貸物件の雨漏りについて原因やメンテナンスについて詳しく解説します。いざ雨漏りの時にどう対処したらいいかについても紹介していますので、賃貸物件を所有している方は参考にしてください。

このコラムのポイント
・賃貸物件で雨漏りが発生した場合、その原因によって修繕費用の負担先が異なる。
・雨漏りを放置すると損害賠償額が多額になってしまう可能性がある。
・雨漏りを見つけたら適切な対応をしなくてはいけない。




賃貸物件の雨漏り補修は誰が負担するの?分譲物件の場合は?

まず知っておいていただきたいのが、雨漏りが発生した場合、賃貸物件と分譲物件の場合では補修費用の負担先が異なるという点です。ですから、物件によって雨漏りが起こった時に備えて誰が工事費用を支払うかを事前にチェックしておきましょう。ここでは、賃貸物件の場合と分譲物件の場合についてそれぞれ解説します。


賃貸物件

賃貸物件においては、基本的に雨漏りの修繕費用はオーナー負担になります。ベランダは専有部分として捉えてい方も多いかもしれませんが、共有部分に該当するためです。民法では、共有部分のメンテナンスはオーナー様の責務であり定期点検を行い不具合があれば物件所有者が速やかに是正しなくてはならず、借主もそれを拒否することはできないと定められています。

第606条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
1 ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは、この限りでない。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

サイバー六法|民法(賃貸物の修繕等)


ただし、借主の過失によって雨漏りした場合はこれに該当せず、協議をした上で借主負担となる場合もあるため、費用を支払う前に原因を明らかにすることも重要です。


分譲物件

では、各戸で所有者が異なる分譲物件の場合は誰が修繕費用を負担するのでしょうか。老朽化など誰にも過失がない雨漏りの場合には、管理組合の修繕積立費で賄います。ただし、賃貸物件と同様に部屋の持ち主の過失による雨漏りであれば、その部屋の持ち主が修繕費用を負担することとなります。万が一、階下の部屋にまで損害が出た場合はそちらも負担しなくてはいけないため、窓の開けっ放しやベランダの扱い方を特に注意しなくてはいけません。




雨漏りを放置するとどのようなトラブルに?損害賠償の可能性も

マンションやアパート、テナントビルにおいて経年劣化による原因でで雨漏りが起こった場合、所有者には損害賠償をする責任が発生します。賠償内容は建物の修繕や復旧だけには止まらないケースもあるため、雨漏りのカバーできる火災保険に加入したり、早め早めのメンテナンスを行ったりすることは賃貸物件を維持管理する上で欠かせません。雨漏りが発生した場合に損害賠償しなくてはいけない項目は以下の通りです。

・家具や備品が汚れた場合の清掃費用
・家具や備品が損傷した場合の弁償費用
・借主が休業せざるを得なくなった場合の休業補償


雨漏りの被害範囲によって損害賠償費用は大きく異なりますが、大なり小なりまとまった費用が発生してしまいます。また、それだけではなく貸主と借主の関係にもヒビを入れかねません。賃貸物件を正常に維持し、借主と穏便で良好な関係を保つためには、早めの防水メンテナンスが必須です。ですから、ぜひ専門会社と長期メンテナンス計画を立ておきましょう。


雨漏りの主な原因は?

雨漏りの原因は、「老朽化によるもの」と「使い方によるもの」があります。先ほどもお話した通り、雨漏りの原因によって修繕費用の負担先が異なるため、不具合が発生した場合は速やかな修繕だけではなく原因の追究も重要です。一般的な原因は下記の通りです。

・屋上やベランダの防水層劣化
・窓サッシ周りのシーリング目地劣化
・外壁クラックなどの発生や塗膜の劣化
・(住人の過失による)屋上やベランダの防水層破断や亀裂
・(住人の過失による)窓の閉め忘れ
・(住人の過失による)排水ドレンの詰まり

これらを未然に防ぐためには、屋上やベランダの定期点検は必須であり、借主の方にもスペースの使用ルールを明確にするなど所有者としての対応が欠かせません。ただし、一般の方が目視で初期の劣化を見極めることは難しいため、防水専門会社などのプロに依頼をして定期的に調査をしてもらうことをおすすめします。

〈関連ページ〉
下記ページでは賃貸物件における雨漏りの原因や対処方法、防水工法別の耐用年数について解説しています。興味のある方は是非合わせてご覧ください。




どのくらいで防水メンテナンスを検討するべき?耐用年数は?

防水のメンテナンス方法や周期は工法によって異なるため、現状どのような工事が施されているかを知ることも大切です。新築時の建築図書や改修時の見積もり書から工法を読み解くことが可能です。主な防水工法の耐用年数は以下の通りです。

 耐用年数
塗膜防水
ウレタン防水(密着工法):5年程度
ウレタン防水(通気緩衝工法):10年
アスファルト防水
改質アスファルトシート防水:15年~20年
シート防水
塩ビシート防水(密着工法)10年~15年程度
塩ビシート防水(機械的固定工法):15年~20年程度
※上記内容はあくまで標準的な材料・工法の場合で、機能性材料を使用した場合など、一部適合しない場合もあります。ご了承ください。


万が一、防水工法が分かる資料がない場合は、専門会社へ問い合わせて現状調査をしてもらうこともおすすめです。また、既存の防水工法とは異なった工事をすることで、メンテナンス周期を延ばすことも可能です。「雨漏りが心配」「トラブルを未然に防ぎたい」という方は、プロに相談してみましょう。

〈関連ページ〉
下記ページでは、主な防水工法について詳しく解説しています。それぞれの特徴についても紹介していますので、ぜひ該当する工法についてご覧ください。




雨漏りが発生したらまずどうしたらいいの?工事手配のフローは?

雨漏りを見つけると慌ててしまいますが、適切な処置を速やかに行うことで被害範囲を最小限に食い止めることができます。ここでは、雨漏り発見から工事を手配するまでのフローを紹介します。一部借主の協力も仰がなくてはいけないため、賃貸物件を所有している方はしっかりと流れを理解しておきましょう。

雨漏りを発見

速やかに専門会社へ連絡しましょう。(早めに緊急対応してもらえる業者を見つけておきましょう。)

賃貸物件の場合は、借主に被害状況を細かく確認しましょう。損害賠償が必要になった場合に重要な資料となります。

雨漏りの状況がわかる写真を撮影しておきましょう。万が一すぐに雨漏りが収まってしまった場合や、原因が不明確な場合に役立ちます。

応急処置をしましょう。ただし、無闇な塗料の上塗りやコーキングの充填は雨漏りを悪化させる可能性があるため禁物です。


被害状況の確認や現状の写真撮影は慌ててしまうと忘れがちですが、あとから貸主と借主で協議する際にとても大切な情報となります。まずは、雨漏りが発生しても慌てないように、すぐに連絡できる業者を見つけておき、オーナーとして落ち着いて行動できるようにしておきましょう。雨漏りが起こってから業者選定をしていると、対処が遅れて被害も拡大してしまいます。

〈関連ページ〉
下記ページでは雨漏りの際の応急処置や業者選定について解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。




工事店はどうやって選ぶ?業者選びに困ったら関防協へご相談を!

工事会社を選ぶのに不安を感じる方は、ぜひ関東防水監理事業協同組合(関防協)へお気軽にご相談ください。当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループです。東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計191社の正会員がおります(2019年11月時点)。また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。そのため、安心して防水トラブルについてご相談いただけます。当HPではマップ上での施工店検索もできるため、地域密着型の信頼できる業者をお探しの方は、ぜひご利用ください。また、下記コラムでは業者選びのポイントについて詳しく解説しています。合わせてご覧ください。




まとめ|賃貸物件の維持管理において防水工事は重要です

今回は、賃貸物件における雨漏りのリスクについてや、対処フローなどについて詳しくお話しました。雨漏りは突然発生するため発生した時の対応が重要です。また、原因によって費用の負担先が異なるため、速やかな原因追究も必要になります。万が一の際に迅速に対応できるように、日頃から定期調査をしてもらえるような業者を選定しておきましょう。「信頼できる業者がわからない」そんな方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合のネットワークで信頼できる工事店を探してみてください。都道府県別に登録業者を検索できるため、近くの工事店を簡単に見つけられます。少しでも防水に不安や不満を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。




こちらもおすすめ!暑さや寒さ対策にも活躍する防水工事

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下記ページではサーモコントロール断熱の詳細や実際に施工をご決断されたお客様のご意見を紹介しています。興味のある方は是非合わせてご覧ください。

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関東防水管理事業協同組合事務局

関東防水管理事業協同組合事務局

建設防水業界トップシェアの田島ルーフィングが主催する、改修工事に特化した工事店ネットワーク。
日々進化する防水工法や現場のニーズに合わせた最適な対応を行うため、施工技術者の育成にも取り組んでいます。
当サイトでは、マンションなどの一般住宅から店舗、大型ビルなど、さまざまな現場を見てきた防水のプロが豊富な知識と経験を活かして防水工事についてわかりやすく解説します。

主な資格
建築士 コンクリート診断士 宅地建物取引士 防水改修調査員

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