防水工事成功のカギは「見積書の見方」
各項目の内容とチェックするべきポイントを解説

集合住宅やビルのオーナー様にとって、屋上防水工事は建物の維持管理には欠かせない重要なメンテナンスです。ですから、業者選びは予算組みには特に慎重になる方は多いはず。工事をして「失敗した」「後悔した」と感じないためには、正確に工事内容を把握して、適正価格で契約しなくてはいけません。

そこで、今回は屋上防水工事における見積書の見方を解説します。

工事見積書は何かと専門的な用語が多いため、一見難しそうに感じる方も少なくないでしょうが、実はどの会社も構成や項目に大差はありません。それぞれどのような工事のことを指しているのかを理解すれば、全体像が把握しやすくなります。

これから建物の防水工事を検討する方は、是非参考にしてください。

このコラムのポイント
・見積書の内容を正確に理解することで、優良な施工会社を選べる。
・防水工事の見積書はあまり複雑ではないため、基礎的知識を知れば、大枠は把握しやすい。




防水工事の見積項目について(新築・改修の違い)

新築工事の場合には、建設業者が、防水下地まで施工しておいてくれるので、防水工事項目は「防水材の施工」と「端末押え金物設置」のみとなります。

改修工事の場合は、「下地清掃」に始まり、「既存防水層の撤去(立上り部・ドレン廻り他)」・「下地処理工事」を行なった後に、防水材の施工に着手することになります。

従って、防水改修工事では新築よりも見積書の項目数が多くなってしまうのです。

見積書を読み解くことのメリットは、工事内容を把握できることだけではありません。各項目の内容と単価が分かれば、複数業者の見積書を比較し、どちらが高品質でコストパフォーマンスが良いかも判断しやすくなります。

ただし、見積書の構成を知る上で重要なポイントがあります。それは、専門用語の意味を知っておくことです。

防水工事を含む建築業界においては、日常ではあまり聞き馴染みのない言葉は飛び交います。それぞれは決して難しい用語ではないものの、基礎的知識がなければ、やはり本当の意味での理解はできません。

今回紹介します見積書の読み方と合わせて、関連する専門的用語の意味についても事前に知っておきましょう。

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見積書項目から優良な工事業者を見極めるには?

では、具体的には防水工事の見積書はどのような構成でできているのでしょうか?ここでまず知っておかなくてはいけないのが、費用の種類についてです。

防水改修工事の流れは以下の通りです。

下地清掃工事

撤去・下地処理工事

防水工事


防水改修工事は、上記図工程(流れ)で行われますが、撤去工事の範囲や下地処理工事の内容については、既存下地の種別や劣化状況によって異なるため、現場ごとに必要な工事項目がリストアップされているか否かを見極めることが、優良な業者を選ぶ際のポイントになります。

では、防水工事の工事価格において一般的に計上される項目について、詳しく見ていきましょう。


仮設工事

足場設置解体工事など工事に直接関連する「直接仮設工事」と、現場事務所や資材置き場の設置など工事に間接的に関わる「間接仮設工事」があります。

比較的中小規模の現場においては直接仮設工事が主で、足場設置解体(足場架け払い)は「一式」もしくは「㎡ × 単価」で表記されるのが一般的です。

防水工事単独で行われる場合は、「材料荷揚げ廃材降ろし費用」も仮設工事に含まれます。



解体撤去工事

既存防水材や付帯品の撤去及びその処分費がこちらに計上されます。

平成29年に改正された廃棄物処理法によって、建設系廃棄物の処分における管理が徹底されているため、極端に安い場合にはきちんとした処理をするのかどうかを、施工会社に確認しましょう。万が一不法投棄されてしまうと、後から大きなトラブルになりかねません。

既存防水層が露出アスファルト防水やシート(塩ビ・ゴム)防水の場合は、立上り部及びドレン廻り防水層は撤去し、新規防水材と躯体の接着性を確保することが重要です。

又、立上り部防水層を撤去する際には、端末押え金物も撤去・新設を行います。



下地処理(調整)工事

下地処理(調整)工事は、工事の良し悪しを大きく左右する非常に重要な工程です。

主な内容は、高圧水による下地洗浄や、下地劣化箇所の補修です。一般的には、洗浄と補修のどちらも「㎡ × 単価」で表記されますが、部分的に特別な処理が必要な場合は、「箇所× 単価」で算入されている可能性もあります。

こちらの工事項目には、「下地清掃(ケレン清掃・高圧水洗)」「伸縮目地処理(撤去・新設)」「亀裂補修(Uカットウレタンシーリング処理)」「ポリマーセメントモルタル塗布(金コテ仕上げ・ノロ引き)」「下地活性材塗布」「ドレン廻り補修(ドレン廻り斫りモルタル修正・二重ドレン及びドレンキャップ設置)」等が挙げられ、劣化が進んでいる場合には工事項目が多くなります。



防水工事

工法によっても異なりますが、平場部分(平らな部分)・パラペット部分(立ち上がり部)・側溝部分で作業内容が異なるため、それぞれ「㎡もしくはm × 単価」で計上されます。ただし、少量の場合は「一式」で表記されている場合も多いです。

数量以外にもチェックしなくてはいけないのが、材料・工法が明記されているかどうかです。何を使ってどのような工事をするのかが不明瞭な見積書には注意してください。



シーリング工事

防水工事においては、工法問わず必ずこのシーリング工事が伴います。防水シートの端部や塗装部分との取り合い、換気口など付属品周りなど、必要な場所について計上されているか確認しましょう。一般的には、「m× 単価」で計上されます。

合わせて、どのような材料を使うかもチェックしましょう。上から塗装を施す箇所には、変成シリコン系、耐候性が必要な箇所にはシリコン系やアクリルウレタン系など、場所によって適した材料は異なります。





諸経費

諸経費は、内容が不明確だと思う人も多いかもしれませんが、現場を安全に管理するためには欠かせない費用です。主な内容は以下の通りです。

  • 現場管理費(現場監督人件費や道路使用許可申請費用など)
  • 現場諸経費(保険料、労務者の交通費、工事車両の駐車料金など)
  • 一般諸経費(現場に直接関係のない会社事務に関わる人件費や備品費、通信費など)

これらが工事費に加算されます。一般的には、純工事費の5〜20%程度が一般的で、工事規模や施工会社の規模により、金額は異なり、通常は「一式」で計上されます。諸経費が他社より極端に安い場合は、別途「現場管理費」として計上されている可能性もありますが、それもなければ事前に管理体制について確認してみましょう。


一口メモ
見積書の備考欄に「材工共」や、「材のみ」「工のみ」という表記がある場合があります。あまり聞き馴染みのない言葉なので、意味を理解しておきましょう。
材工共・・・材料費及び施工費の合算
材のみ・・・材料費のみ
工のみ・・・施工費のみ



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見積書の内容は信用できる?失敗しない業者選びのポイント

工事内容についての理解を深めたとしても、それぞれの数量はやはり一般の方では算出が難しいのが現実です。そのため、「数量は合ってる?水増ししていない?」と心配な方は、是非“相見積もり”(複数の施工会社に見積もりを作成してもらう)を検討しましょう。

施工会社に悪意がなくても、計測方法や算出方法によってや多少の誤差があるのは想定できますし、材料ロスを見込んだ数量を計上することもあります。ですから、複数の見積もりを比較することで、ある程度の正しい数量をや適切な単価の参考にしてください。

ただし、ここでポイントになるのが「数量が多い・単価が高い=悪徳業者」ではないということです。

重要なのは、現状に合った適切な工法を選んでいるかや、現場管理を安全に行うかどうかという点であり、多少の価格差で施工会社を選ぶことはトラブルの原因になりかねません。そして、見積書に「一式」が多い会社にも気をつけましょう。工事内容や数量が不明確であるため、いざ着工してから行き違いが起こる可能性もあります。

相見積もりは建築業界においてはごく当たり前のことなので、比較検討して疑問に思った点は、都度細かく確認しましょう。また、他社の見積もりには計上されているのに、一方では入っていない項目があれば、それもチェックポイントです。

また、見積もりの最後に、極端な値引きをする会社にも注意してください。必ず「値引きの根拠」を確認しましょう。根拠のない値引きをする会社は、何かしらの問題を抱えている可能性もあります。

チェックポイント
・相見積もりをして、数量や単価を比較する。
・工法や材料が明確か確認する。
・根拠のない多額の値引きがある場合は要注意。



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まずは、関防協の「防水改修調査診断員」へご相談を

工事会社を選ぶのに不安を感じる方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合(関防協)へまずはお気軽にご相談ください。当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計191社の正会員がおります(2019年11月時点)。また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。

当HPでは、防水改修調査診断員による無料診断も申し込みや、マップ上での施工店検索ができます。ぜひお気軽にご活用ください。




まとめ|専門用語が飛び交う見積書も内容はシンプル

今回は、防水工事における見積書の見方について解説しました。専門的な用語が多いため、理解することを拒否してしまうオーナー様や、施工会社に丸投げしてしまうオーナー様も少なくありません。しかし、それこそ失敗の原因になってしまう可能性があります。

複数の見積書を比較してみても、出てくる用語やほとんど同じなはずです。基礎的知識や工事項目の大枠を理解するだけで、見積書の内容を把握することは難しくありません。是非、見積もりの内容を理解して、適切な施工会社や工法を選びましょう。

私たち関防協では、現状の建物調査も承っております。「信頼できる業者がわからない」そんな方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合のネットワークで信頼できる工事店を探してみてください。都道府県別に登録業者を検索できるため、近くの工事店を簡単に見つけられます。少しでも防水に不安や不満を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。



運営者情報

関東防水管理事業協同組合事務局

関東防水管理事業協同組合事務局

建設防水業界トップシェアの田島ルーフィングが主催する、改修工事に特化した工事店ネットワーク。
日々進化する防水工法や現場のニーズに合わせた最適な対応を行うため、施工技術者の育成にも取り組んでいます。
当サイトでは、マンションなどの一般住宅から店舗、大型ビルなど、さまざまな現場を見てきた防水のプロが豊富な知識と経験を活かして防水工事についてわかりやすく解説します。

主な資格
建築士 コンクリート診断士 宅地建物取引士 防水改修調査員

関防協(関東防水管理事業協同組合)について