マンションの大規模修繕工事とは?【進め方・費用・周期】管理組合が知っておくべきポイントを徹底解説

マンションの機能と資産価値を維持する上で欠かせないのが「大規模修繕工事」です。
大規模修繕工事は法律などで義務付けられていませんが、適切に実行しないと、共用部の見た目が損なわれるだけではなく、構造躯体が劣化し、住民の生活も脅かされる事態に発展する恐れがあります。
しかし、初めて大規模修繕工事を実施する管理組合様にとって、わからない点も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、マンションにおける大規模修繕工事の基本知識と、その必要性、周期から、具体的な工事内容、よくある失敗例と対策、着工までの流れについて、わかりやすく解説します。
マンションの大規模修繕工事にかかる費用や関連する補助金・減税制度、そのほか、修繕積立金不足など多くの方が気になるご質問も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- マンションの大規模修繕工事は、共用部を対象に建物の機能・安全性・資産性を維持・向上させるために行われ、12〜15年周期が目安です。
- 工事計画の進行は管理組合主導で行うため、計画始動から着工までの流れを把握しておくことが失敗を防ぐために重要です。
- マンションの大規模修繕工事には、1回につき100〜250万円/戸の費用がかかるため、修繕積立金の確認や補助金・助成金の活用をおすすめします。
- 「マンションの屋上防水が劣化していないか心配」「長期修繕計画を立てる上で、工事時期や工事金額の目安を知りたい」という管理組合様は、建物診断の実績が豊富な関東防水管理事業協同組合(関防協)にご相談ください。
Contents
マンションの大規模修繕工事とは|定義と必要性、適正周期

マンションにおける大規模修繕工事とは、新築時もしくは何年か経った後に管理組合によって作成される「長期修繕計画」に沿って計画的に実施される共用部の改修工事です。
※マンションの長期修繕計画について詳しく知りたい方は「国土交通省「長期修繕計画ガイドライン」とは?マンションにおける必要性、改定・見直しについて解説」を併せてご覧ください。
具体的には、以下の目的で屋上や外壁、エントランスなどを、修繕・補修します。
【マンションにおける大規模修繕工事の目的】
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大規模修繕工事の実施時期は、築15年までで最低1回、築30年までで最低2回が目安で、12〜15年に一度が一般的とされており、国土交通省が公表するガイドラインに「計画期間を30年以上とし、かつ、大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とする」と記載されています。
(参考:国土交通省|マンション管理|長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン(コメント含む))
※マンションにおける大規模修繕工事の周期について詳しく知りたい方は、「マンションの大規模修繕は何年周期がベストか|ガイドライン・目安年数と工事時期を決める方法、減税・補助金を解説」を併せてご覧ください。
マンションにおける大規模修繕の工事内容|マンションにおける大規模修繕の工事内容

マンションにおける大規模修繕工事は、屋上防水や外壁塗装だけではなく、施工範囲は建物全体に及びます。
大規模修繕工事に含まれる主な工事内容は、以下のとおりです。
【マンション大規模修繕工事に含まれる工事内容】
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(参考:国土交通省|マンション管理|長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン(コメント含む))
このように、マンション管理規約で「共用部」に含まれる部分の工事※は、原則として大規模修繕工事に含まれます。
※緊急を要する軽微なものを除く
共用部と専有部の区分は、区分所有法(第4条・共用部分)や、国土交通省が定めるマンション管理標準指針・マンション標準管理規約で定められている通りの物件が大半です。
(参考:e-GOV法令検索|建物の区分所有等に関する法律、国土交通省|マンション管理標準指針(平成17年12月策定)、国土交通省|マンション標準管理規約)
ただし、管理規約の特記事項で標準的な区分と異なるルールが設けられている場合もあるため、大規模修繕計画を立てる際には、まず、共用部・専有部の範囲を確認する必要があります。
マンションにおける大規模修繕工事の進め方|管理組合の具体的な流れ

マンションの大規模修繕工事を主体的に進めるのは、管理会社ではなく「管理組合」で、組合員(区分所有者)の意見を反映させながら工事内容や業者選定を行うのが原則です。
しかし、管理組合では専門的な知識がわからず、管理会社や施工会社に任せて進めてしまう物件は多く、後で後悔するケースも珍しくありません。
そこで、大規模修繕計画の進め方とポイントをまとめて紹介します。
※以下の進め方は一般的な例で、物件によっては異なる場合があります。ご了承ください。
長期修繕計画の確認
まずは、理事会で管理組合で保管している長期修繕計画の内容を確認しましょう。
多くの場合は、管理会社から工事時期が近い旨の連絡を受けます。
大規模修繕工事は、計画が始動してから着工まで1〜2年ほどかかるため、実施すべき時期から逆算して、スケジュールを進めることが重要です。
修繕委員会の発足・集会(体制づくり)
数名の組合員と理事により、修繕委員会を発足します。
建築や法律、経理に詳しい組合員がいればベストですが、いなければ大規模修繕コンサルタントなどのサポートを専門家に委託することも可能です。(任意)
ただし、パートナーとなる専門家の選定や契約をする際には、総会決議が必要で、組合員の1/2もしくは3/4以上の賛成を集めなくてはいけません。
建物診断の調査・住民アンケートの実施
コンサルタントもしくは管理組合から、建築会社や施工会社に建物診断を依頼します。
建物診断では、共用部の劣化度合いや補修の緊急性が調査され、工事計画を立てる上で欠かせない資料です。
修繕委員会は、診断結果やこれまでの各種点検結果、修繕履歴を整理し、さらに住民アンケートにより、共用部で現在不満に感じている点や修繕・改善してほしい要望を取りまとめます。
工事の見積もり依頼(複数会社)
調査結果をもとに、複数の施工会社から工事見積もりをとりましょう。
その際には、総額だけで比較せず、工事範囲や塗料などの仕様が揃っているかに加えて、施工管理体制や保証、工期などを含めた総合的な検討が重要です。
必要に応じて、見積もりを作成した施工会社を呼び、総会で工事内容の説明をしてもらう場合もあります。
工事計画の作成(予算・工事内容の検討)
修繕金の積立状況と調査結果を踏まえて、工事計画をまとめます。
この段階で必要な工事を修繕積立金でまかなえない場合は、再度、施工会社やコンサルタントと調査内容や工事内容を精査し、大幅な資金不足の場合は長期修繕計画の見直しが必要です。
また、今回の大規模修繕工事が新築から何度目なのかによって、必要な工事内容が異なるので注意しましょう。
(引用:住宅金融支援機構|「大規模修繕の手引き~マンション管理組合が知っておきたい工事・資金計画のポイント~」のご案内|(2)詳細版|1.大規模修繕工事の進め方)
施工業者の選定・工事金額や工期の決定(総会決議)
工事内容と修繕金の残高をすり合わせて基本計画がまとまったら、修繕委員会で業者選定・工事金額や工期の決定を行い、組合員で総会決議をします。
決議を取る前に、組合員に対する報告会や広報誌による計画内容の周知などの準備を進めましょう。
工事内容によっては、基本計画の賛成決議に加えて、管理規約の一部改正や金融機関への借入実施に関する件についても話し合わなければいけない場合もあります。
大規模修繕工事の契約・着工準備(住民説明会など)
工事計画について組合員から賛成決議を取れたら、施工会社と契約を結び、着工準備に取り掛かります。
具体的には、住民説明会を実施し、工程の詳細や工事中の注意点について周知します。
工事内容に玄関ドアや窓の交換を含む場合は、各戸の在宅日・在宅時間を細かく調整しなくてはいけません。
ただし、これらの着工前準備は、施工会社が主導となって進めるため、修繕委員会はそのサポートをするにとどまります。
この期間に、契約金や着工金の支払いが発生する可能性があるため、事前に施工会社に確認し、準備を整えておきましょう。
着工・中間検査
着工後は、工程の節目で、施工会社の現場監督や担当者、コンサルタント、修繕委員立ち合いのもと、検査が行われます。
中間検査では、工事の進捗状況や仕上がりを確認し、その時点で気になることを質問し、必要に応じて計画変更を相談することも可能です。
完了検査・工事引き渡し・保証期間開始
完了検査は、発注した工事内容が全て正しく施工されたか確認し、合格すれば、施工会社から竣工図書を受けとり、引き渡しを行います。
工事引き渡し日から施工保証期間が開始され、施工会社から最終工事金の請求を受けるのが通常の流れです。
次回以降の工事について検討
大規模修繕工事が終わった後は、次回の工事に備えて、以下の資料を整理し、修繕委員会の引き継ぎがスムーズにいくようにしておきましょう。
【大規模修繕工事後に保管すべき資料の例】
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これらの資料整理と合わせて、次回以降の大規模修繕工事で資金不足にならないように、長期修繕計画の内容や修繕積立金額を見直さなくてはいけない場合もあります。
マンション大規模修繕工事の費用目安と補助金・減税制度

マンションの大規模修繕計画を進める際に最も気になるのが工事費用の相場や目安です。
近年は既存マンションの長寿命化や活用を目的に、国や都道府県が実施する補助金・助成金事業や減税特例が実施されているため、それらの詳細も事前にチェックしておきましょう。
費用相場と平均単価
国土交通省の調査によると、マンションの大規模修繕にかかる費用は、1戸あたり「100〜250万円」が相場で、1回目(中央値110.2万円/戸)が最も高く、2回目(中央値106.1万円/戸)、3回目(中央値97.0万円/戸)と安くなっていくのが一般的です。
※上記の金額は適正時期に修繕した場合で、工事周期があいているなど、劣化が進んでいる場合はさらに費用が高額になります。
(参考:国土交通省|マンション管理・再生ポータルサイト|Q&A|マンション管理について、国土交通省|マンションに関する統計・データ等|令和3年度マンション大規模修繕工事 に関する実態調査)
ただし、近年はインフレや原油高の影響で工事単価が値上がりしており、修繕積立金の計画が不十分であるマンションは、当初想定していた金額で工事できないケースも増えているため、早めに長期修繕計画を見直すなど、余裕のある資金計画が重要になります。
利用できる補助金・助成金と減税制度
マンションの大規模修繕工事は、国や都道府県が運営する補助金・助成金の対象になる可能性があり、要件を満たせば、2027年3月まで固定資産税の減税対象にもなります。
そのため、これからマンションの大規模修繕計画を始動する方は、制度の詳細を事前にご確認ください。
主に利用できる制度は、以下のとおりです。
| 国の補助金・助成金制度 |
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| 都道府県の補助金・助成金制度 |
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| 国の減税制度 |
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▶︎おすすめコラム:2027年3月終了「マンション長寿命化促進税制」とは|対象要件と申請の流れ、管理組合必見の申請ポイントを解説
▶︎おすすめコラム:マンションの屋上防水工事に活用できる助成金・補助金制度|申請の流れや注意点も解説
国や都道府県の制度に加えて、関東防水管理事業協同組合(関防協)では、屋上防⽔の改修費⽤を補助する「バリュープラスキャンペーン」を実施しております。
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マンションの大規模修繕工事で“よくある失敗例”と対策|管理組合が注意すべきポイント

マンションの大規模修繕工事は、1回につき安くても数千万円の費用がかかり、区分所有者が積み立てた修繕金が充てられます。
また、工事内容や実施時期によっては、劣化を防ぎきれず、雨漏りなど深刻な事態を招きかねません。
そのため、これから大規模修繕工事を計画するマンション管理組合様は、事前に”よくある失敗例”とその対策を抑えておきましょう。
資金が不足している・建物の実情と計画に差がある
国土交通省のガイドラインでは、長期修繕計画を作成してから5年に一度は内容を見直すように推奨しており、これを怠ると、建物の実情と計画に差が生じて、いざ工事する際に資金が不足する可能性があります。
資金不足で適切な時期に必要な工事を実施できないと、劣化が進行し、問題が大きくなったり、改善するための費用が高額になったりする場合があるため注意が必要です。
このような失敗を防ぐためには、専門家による定期的な建物診断と長期修繕計画の見直しが重要になります。
▶︎おすすめコラム:マンション修繕積立金の相場はいくら?最新平均額と値上げの必要性・寿命との関係を解説
工事の優先順位がわかりにくい
多くのマンションは修繕金が潤沢にある訳ではないため、大規模修繕の工事内容に優先順位をつけなくてはいけません。
施工会社から提案される見積書や工事計画書には多くの工事が記載されますが、優先度が高いのは「雨漏り・水漏れ」の原因になる部位や、住民の生活に直結する部位です。
【工事の優先順位が高い部位の例】
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管理組合の合意形成が大変・時間がかかる
管理組合(組合員)の意向と異なる方向で工事計画が進む場合や、工事費の一部を借入なくてはいけない場合は、合意形成が難しく、賛成決議を取れるまで時間がかかる場合もあります。
このような事態になる主な原因は、組合員への説明が不足している点や、修繕委員のみで話を進めてしまっている点にあるため、期間に余裕を持ち、手順を踏んで計画を進行しましょう。
費用が適正かどうかわからない・業者選定を後悔した
工事費用が適正か判断できない場合や、業者選定に不安を感じる方は、必ず最低でも2〜3社から見積もりをとりましょう。
見積もりの細かさ・正確さや、現場管理体制や保証サービスを比較検討すると、自ずと適した業者が見えてきます。
それでも決断できない場合は、大規模修繕コンサルタントや設計事務所に助言をもらいましょう。
その際には、施工会社とのつながりがない第三者的な立場でアドバイスできる専門家を選ぶことが重要です。
マンションにおける屋上防水の劣化は外から見えにくく、気づいた時には修繕費用が大きく膨らむケースも少なくありません。
大規模修繕工事は「早すぎると損」「遅すぎると高額化」するため、まずは現状把握だけでも専門家に相談することが重要です。
関東防水管理事業協同組合(関防協)では、防水改修診断員が無料で現地に出向き調査・診断する「無料訪問診断」を承っております。
「長い間、屋上防水の状態を確認していない」「最上階で雨漏りの跡が見つかった」というマンション管理組合様は、お気軽に私たちまでご相談ください。
【FAQ】マンションの大規模修繕工事に関する「よくある質問」

ここでは、多くの方からいただく「マンションの大規模修繕工事」に関するご質問を紹介します。
Q.長期修繕計画がない(長年見直していない)場合はどうすればいい?
A.マンションの長期修繕計画作成(見直し)は、法律で直接義務付けられてはいませんが、建物の安全性を維持するためには必須なので、速やかに大規模修繕コンサルタントや設計事務所に相談し、計画を作成するか内容の再検討を進めましょう。
長期修繕計画は、不確定な事項を多く含むため、5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて見直す必要があります。
計画の作成や見直しには1年程度かかる場合も多く、その間に建物の劣化が進行する可能性もあるため、早めの対応が欠かせません。
Q.修繕積立金が不足している場合の対処方法は?
A.大規模修繕工事の実施にあたって修繕積立金が不足している場合は、「一時金の徴収」「管理組合の借入」「修繕積立金の値上げ」が必要ですが、どれもすぐに実行できないため、多くのマンションでは工事内容の見直し(先送り)をしています。
工事内容の見直し(先送り)は最も現実的な方法ですが、劣化がかなり進行している場合はあまり期間の猶予がない点には注意が必要です。
修繕積立金が不足して各区分所有者から一時金を徴収する場合、1世帯につき数十万円から数百万円の金額になり、管理組合が金融機関から融資を受けると、建物全体の資産価値低下につながるため、どちらの方法も慎重に検討しましょう。
月々集める修繕積立金を値上げする場合は、管理組合員の同意形成が必要で、規約によっては特別決議(3/4以上の賛成)が必要になる場合もあり、実行できるまで時間がかかるため早めに計画しましょう。
Q.マンションの大規模修繕工事で“談合”が問題になっているって本当?
A.2025年3月に、首都圏の分譲マンションで大規模修繕工事を請け負う約30社に対して独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会が立ち入り調査を行い、”偽装相見積もり”の問題が露呈しました。
談合の疑いがある事例の多くは、管理組合の特定理事や管理会社、コンサルタントが施工会社と結託し、すでに受注業者が内定しているにもかかわらず、表向きだけ複数の会社から見積もりをとるケースです。
国土交通省では、コンサルタントを利用する場合は、工事の発注方法を設計監理方式※にするなど、公平性・透明性を持った業者選定を推奨しています。
※設計監理方式:設計や工事監理(チェック作業)と、施工を別の会社に分けて発注する方式で、建築士やコンサルタントが、中立的な立場で品質チェックをできる
(参考:国土交通省|マンション管理|マンション大規模修繕工事の発注等の適正化について(通知))
マンションの大規模修繕工事に関するお悩みは、防水工事のプロ集団である「関防協」までご相談ください。
関東防水管理事業協同組合(関防協)は、主に関東の防水改修会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬以外に、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計192社の正会員がおります。(2026年1月時点)
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まとめ
マンションにおける大規模修繕工事は、共用部を対象に、建物の機能・安全性・資産性を維持もしくは向上させるために必要な工事で、12〜15年周期を目安に実施します。
工事計画の進行は管理組合主導で行うため、計画始動から着工までの流れを把握しておくことが失敗を防ぐために重要です。
「マンションの屋上防水が劣化していないか心配」「長期修繕計画を立てる上で、工事時期や工事金額の目安を知りたい」という管理組合様は、建物診断の実績が豊富な関東防水管理事業協同組合(関防協)にご相談ください。
早めの対策が将来の修繕費を大きく左右します。



