鉄筋コンクリート造のマンション・テナントビルは改修できる?長寿命化に向けたポイントとは?

鉄筋コンクリート(RC)造は、中小規模のマンションやテナントビルの60%以上を占めている建築構造です。鉄筋を内部に配置したコンクリートが主構造となっているため、頑丈で長期間メンテナンスフリーと考えている方が多いかもしれません。しかし、適切なお手入れをしなければ、劣化が進み建物の寿命は短くなってしまいます。
そこで、今回は鉄筋コンクリート造建築物の改修について、抑えておくべきポイントやおすすめの改修方法などについて解説します。改修を検討する上で関連する用語も紹介しますので、鉄筋コンクリート造のマンションやビルをお持ちの方は是非参考にしてください。

このコラムのポイント
・鉄筋コンクリート造の建物を長寿命化させるには、定期的な改修は必須。
・劣化部分を補修する以外にも、健全な状態でも長寿命化に向けた改修工事がある。



鉄筋コンクリート(RC)の耐用年数はどのくらい?

鉄筋コンクリート(RC)造は、日本国内において最も普及している工法といっても過言ではありません。では、鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数はどのくらいのなのでしょうか?

RC造の耐用年数について調べてると「法定耐用年数=47年」というポイントが目につくでしょう。法定耐用年数とは、税法上の目安となる耐用年数のことで、固定資産税を申告する際に減価償却ができる年数を指します。ここで誤解してはいけないのが、「法定耐用年数≠ 実際の耐用年数」という点です。耐用年数は、あくまで国が「資産価値はこれくらいの期間でなくなる」と定めた年数であるため、実際に耐久できる年数とは異なります。立地条件やメンテナンス頻度によって実際にその建物がどのくらい使用できるかは大きく変動するため、状況次第では想定より早く劣化が進み建て替えを余儀無くされる可能性も少なくありません。

手入れさえきちんとし続ければ、理論上は100年以上もつとの言われているため、鉄筋コンクリート造の建物を長期間正常に保つためには、立地条件に合った適切な改修は欠かせません。その建物をどのくらい使用したいかを中長期的に計画立て、専門家に改修プランを相談することをお勧めします。



鉄筋コンクリートを理解するための関連用語

鉄筋コンクリート造の建物に定期的な改修は不可欠ですが、適切なメンテナンス方法を専門家と検討する際に知っておくとよい用語がいくつかあります。ここでは、鉄筋コンクリート造を理解する上でポイントとなる用語について解説します。

かぶり厚さ

鉄筋コンクリート造を知る上で中性化と関連して知っておくべきキーワードが「かぶり厚さ(かぶり厚)」です。これは、鉄筋を覆っているコンクリートの厚さを指します。この厚さが建物の耐久性に大きく影響するため、建築基準法でも厳しく定められています。

(鉄筋のかぶり厚さ)

第79条
鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、耐力壁以外の壁又は床においては2センチメートル以上、耐力壁、柱又ははりにおいては3センチメートル以上、直接土に接する壁、柱、床若しくははり又は布基礎の立上り部分においては4センチメートル以上、基礎(布基礎の立上り部分を除く。)においては捨コンクリートの部分を除いて6センチメートル以上としなければならない。

引用:国土交通省|建築基準法施行令の改正方針について


このように、建設時には部位によってかぶり厚さの最小値が定められていますが、年々表面が中性化することによってその強度が低下していきます。平均で、一年に表面から0.5mmずつ中性化すると言われているため、かぶり厚さ3cmの場所でも何もしなければ60年で鉄筋が露出している状態と変わらなくなる計算になります。ですから、定期的なメンテナンスによって必要なかぶり厚さを維持しなくてはいけないのです。


不動態皮膜中性化

鉄筋コンクリート造で用いられるコンクリートは強いアルカリ性を帯びています。なぜなら、主成分であるセメント内の鉱物と水が反応して水酸化カルシウムを生成するからです。鉄筋周囲も同様で、高アルカリ環境を保った保護膜を「不動態皮膜」と呼びます。不動態皮膜があるおかげで、鉄筋が水や塩分から守られるのです。

もう一つのキーワードが「中性化」です。打設したばかりのコンクリートはph0~14で、これが空気中の二酸化炭素に触れ続けることで徐々に炭酸カルシウムに変換され、アルカリ性が中性に近づいていきます。この現象を「中性化」と呼びます。中性化が進み不動態皮膜が破断すると、コンクリート内部の鉄筋にサビが生じて膨張し、コンクリートそのものにヒビが発生し最終的には剥がれ落ちてしまいます。

対策としては、コンクリート表面を保護コーティングしたり、微細なヒビでも樹脂材を注入して拡大を防いだり、補修用モルタルで劣化箇所を補修する等の処置が効果的です。

塩害

塩害とは、コンクリート内に塩化物イオンが侵入して鉄筋などを腐食させてしまう現象のことです。鉄筋が腐食すると正常な強度が保てなくなるだけではなく、膨張してコンクリートを割ってしまうこともあります。主な原因は下の2つです。

  • コンクリート内の砂利に海砂が含まれていた場合
  • 海に近い場所で建物が塩化物イオンの含まれた風などに晒され続けている場合


近年、コンクリートに海砂が含まれているケースはほとんどないものの、海に近い場所では建物が潮風に晒されるため、塩害は切っても切り離せない問題です。また、海から遠い場所でも海水濃度の高い川沿いの建物や、凍結防止の塩化カルシウムを道路に撒く寒冷地では同様に塩害への対策が必要です。対策としては、十分なコンクリートかぶり厚さを維持することや、腐食が進んでしまっている鉄筋の防錆処理などが挙げられます。



改修時期を検討する際のポイントは?

リバンプ工法の施工写真がございましたらご提供ください。

冒頭からお話している通り、鉄筋コンクリート造においては定期的な改修が建物の寿命を決めるといっても過言ではありません。しかし、一般の方が適切な改修時期を判断することは難しいでしょう。そこで、ここでは劣化を見極めるポイントについて解説します。

鉄筋コンクリートの劣化は段階によってその症状が異なります。

外壁・防水などの塗膜劣化や剥離

コンクリートのひび割れ(クラック)

コンクリート内部の鉄筋に錆発生・膨張

コンクリートの剥離・欠落


つまり、できるだけ早く軽微な劣化を見つけて処置をすれば、深刻な状況を未然に防ぐことができるということです。では、それぞれ詳しく説明していきましょう。

その① 塗膜劣化・剥離の有無

まず最初に現れる現象が、屋上防水・外壁塗装・付帯設備(手すりや換気ガラリなど)の塗膜劣化や剥離です。塗膜は、風雨や紫外線にさらされ続けると、その撥水性を失って風化してしまいます。コンクリートを保護していた塗膜が剥がれ落ちてしまうと、構造体そのものの劣化を引き起こしてしまうため、塗り替えなど早めの処置が欠かせません。

その② ひび割れ(クラック)の有無

塗膜が剥離すると、コンクリートに直接雨や紫外線が当たってしまい、徐々にひび割れ(クラック)が発生します。ごく微細なヘアクラックと呼ばれるひび割れと、耐久性低下に直結する構造クラックとでは対処方法は異なりますが、どちらにしても放置すれば鉄筋腐食の原因となるため、見つけ次第速やかに改修する必要があります。

その③ コンクリート爆裂の有無

クラックを放置すれば、コンクリート内部の鉄筋が錆て膨張し、その体積増加によってコンクリートが内部から破裂してしまいます。この現象を「爆裂」と言います。爆裂が起きると鉄筋とそれを覆っていたコンクリートが完全に肌別れして、耐久性が維持できません。また、タイル張りの建物においては押し出されたコンクリートによって広範囲のタイル剥離も引き起こしてしまいます。

その④ コンクリート剥離・剥落の有無

コンクリートの爆裂をも放置してしまうと、すぐにコンクリートは剥がれ落ちてしまいます。また、爆裂していない場合でも、コンクリートの中性化を放置しているとコンクリート表面が浮いてしまう可能性が高いです。すると、鉄筋が露出して錆がさらに進行してしまい、場合によっては補修不可能で建て替えを余儀無くされる状況になりかねません。剥離や剥落を未然に防ぐためには、専門家による定期的な現状調査を行い、手遅れになる前に処置する必要があります。



鉄筋コンクリート造の長寿命化を目指すなら「リバンプ工法」がおすすめ

鉄筋コンクリート造の建物を長持ちさせるために必要なのは、ずばりプロによる定期的な建物調査です。劣化を見つけてから処置をしては手遅れになる場合が多いため、劣化箇所を見つけ次第適切な改修をしなくてはなりません。そこでおすすめなのが、「リバンプ工法」です。

本工法は、不動態皮膜の再生機能を有する亜硝酸イオンを、いかに有効に効果を発現させるかを主眼としたものであり、リチウムイオンと組み合わせた「亜硝酸リチウム」として高い保水性を持たせ、コンクリート内でも乾燥固化せず浸透拡散を効率化した設計となっております。また、細孔を緻密化させると共に水分で満たすことによる劣化因子の高い遮蔽効果を有します。リチウムイオンはアルカリ骨材反応の抑制効果も有します。

引用:田島ルーフィング|躯体改修|リバンプ工法の効能



リバンプ工法は、現状の劣化度合いや立地条件に応じた躯体補修工法と適切な表面保護工法を組み合わせて建物を長寿命化させることができます。建物を「中性化」や「塩害」から守るためにも、ぜひこのリバンプ工法を検討してみましょう。

〈関連ページ〉
リバンプ工法の効能や各種工法の詳細など詳細については、下記ベージをご覧ください。

田島ルーフィング|躯体改修|リバンプ工法の効能


リバンプ表面被覆工法

コンクリート内部の鉄筋周囲に本来の不動態皮膜の機能を再生させる工法が「表面被覆工法」です。非破壊で表面から施工できるため、全面改修工事に適した工法です。また、コーティング層が二酸化炭素や塩化物イオンの侵入を防ぎ、中性化やかぶり厚の現象対策に効果を発揮してくれます。大幅に遮蔽するため、中性化対策・かぶり厚不足対策に適します。

リバンプ断面修復工法

中性化や塩害が進んでコンクリートの爆裂や剥離・剥落が発生している場合でも適応できる工法が「断面修復工法」です。リバンプ工法では、一般的な断面修復工法とは異なる亜硝酸リチウムを含んだ材料を用いるため、高い防錆効果が期待できます。鉄筋が露出している部分の再劣化を防止できるため、劣化のひどい建物の部分補修に適しています。

リバンプ「防錆環境」型錆工法

表面被覆工法や断面修復工法で用いる亜硝酸リチウムを使った鉄部の防錆対策が、「防錆環境型錆工法」です。屋上の配管支持アングルや踊り場などがモルタル打ちされた鉄骨階段、手摺支持アングルなどの錆がひどい鉄部の改修におすすめです。鉄部周囲のモルタルを撤去して亜硝酸リチウムを含んだ防錆ペーストを塗布します。「防錆環境」を整えることで、鉄部の錆による劣化を防ぐことができます。

リバンプコート

鉄筋コンクリートの躯体を蘇らせるリバンプ工法ですが、さらに建物を長寿化したい方におすすめなのが「リバンプコート」です。こちらは防水性・透湿性・撥水性を兼ね備えた外壁塗材で、鉄筋腐食の原因となる水を考慮した材料です。ですから、まだ比較的新しい建物にも躯体劣化を未然に防ぐ目的で施工できます。

〈関連ページ〉
リバンプコートについて詳しく知りたい方は、下記デジタルカタログをご覧ください。

田島ルーフィングデジタルカタログ|リバンプコート



工事店はどうやって選ぶ?業者選びに困ったら関防協へご相談を!

工事会社を選ぶのに不安を感じる方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合(関防協)へお気軽にご相談ください。当協同組合は、主に関東にある防水改修の会社で形成されているグループです。東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計191社の正会員がおります(2019年11月時点)。また、年々進化し続けている防水工事についての教育活動も行なっており、適切な調査や提案ができる「防水改修調査診断員」の育成を実施しています。そのため、安心して防水トラブルについてご相談いただけます。当HPではマップ上での施工店検索もでき、建物の防水層改修調査も承っておりますので、ぜひお気軽にご活用ください。

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下記コラムでは、施工会社の選び方を詳しく紹介しています。どこに頼めばいいか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。



まとめ|RC造のマンション&ビルは適切な改修で長寿命に

今回は、鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数や、関連用語、おすすめの改修工法について紹介しました。鉄筋コンクリート造は木造と比べると丈夫でメンテナンスフリーのイメージを持たれる方が少なくありません。しかし、定期的なメンテナンスと適切な改修を怠れば、建物の寿命は間違えなく縮まってしまいます。ですから、定期的にプロに建物診断を依頼して、常に現状を把握するように心がけましょう。私たち関防協では、現状の建物調査も承っております。「信頼できる業者がわからない」そんな方は、ぜひ関東防水管理事業協同組合のネットワークで信頼できる工事店を探してみてください。都道府県別に登録業者を検索できるため、近くの工事店を簡単に見つけられます。少しでも防水に不安や不満を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

運営者情報

関東防水管理事業協同組合事務局

関東防水管理事業協同組合事務局

建設防水業界トップシェアの田島ルーフィングが主催する、改修工事に特化した工事店ネットワーク。
日々進化する防水工法や現場のニーズに合わせた最適な対応を行うため、施工技術者の育成にも取り組んでいます。
当サイトでは、マンションなどの一般住宅から店舗、大型ビルなど、さまざまな現場を見てきた防水のプロが豊富な知識と経験を活かして防水工事についてわかりやすく解説します。

主な資格
建築士 コンクリート診断士 宅地建物取引士 防水改修調査員

関防協(関東防水管理事業協同組合)について