屋上・バルコニーの防水改修工事とは?マンション管理組合が知っておきたい時期・工法・費用の考え方

※こちらの記事は、2011年10月に公開したものを、2026年8月に内容を更新し、再編成・再公開したものです。
マンションの屋上やバルコニーは、日々、雨風や紫外線、温度変化の影響を受けており、防水層の劣化を放置すると、雨漏りだけではなく、構造躯体の劣化や建物寿命の短縮、資産価値の低下をもたらす可能性があります。
しかし、マンション管理組合様の中には、「防水改修の時期が分からないない」「どのような劣化があると危険か知らない」というところも多いのではないでしょうか。
また、「大規模修繕工事まで防水改修は待つ」というケースも少なくありませんが、屋上やバルコニーの防水層は、知らないうちに劣化が進行している可能性もあります。
そこで本記事では、屋上・バルコニーにおける防水改修の重要性と国土交通省の工事周期目安、防水層の主な劣化症状、建物診断の重要性、工法別の改修方法について詳しく解説します。
見積もりのチェック項目や失敗しないためのポイント、費用・補助金等、マンション管理組合様が気になる「よくある質問」も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
このコラムで分かること
- 屋上やバルコニーの防水改修工事は、マンションの建物寿命と快適な住環境を維持するために欠かせない工事です。
- 国土交通省が作成するガイドラインでは、防水改修工事の周期を「補修・修繕は12〜15年」「撤去・新設は24〜30年」としていますが、これはあくまでも参考値であり、実際の実施時期は建物診断の結果を踏まえて個別で決める必要があります。
- ウレタン防水・シート防水・アスファルト防水の一般的な改修方法に加えて、既存防水層の上から施工する「かぶせ工法」や、室内の暑さや寒さを軽減できる「断熱改修」の選択肢もあります。
Contents
- 1 マンションの屋上・バルコニー防水はなぜ重要なのか|劣化を放置するリスク
- 2 屋上・バルコニーの防水改修工事はいつ必要なのか|国土交通省の周期目安
- 3 屋上・バルコニーの防水改修を検討したい代表的な劣化症状
- 4 屋上・バルコニーの防水改修前に行う「建物(防水)診断」とは
- 5 屋上・バルコニーの防水改修工事にはどのような工法があるのか|種類と工程
- 6 屋上・バルコニーの防水改修工事にかかる費用はどのくらいか|見積もりのチェックポイント
- 7 マンションの屋上・バルコニー防水改修工事を失敗しないためのポイント|大規模修繕工事との関連性
- 8 屋上防水の改修は「かぶせ工法」「断熱改修」という選択肢も
- 9 【FAQ】屋上・バルコニーの防水改修に関する「よくある質問」
- 10 まとめ
マンションの屋上・バルコニー防水はなぜ重要なのか|劣化を放置するリスク

マンションにおいて、屋上・バルコニーの防水層は、建物への雨水浸入、ひいては、建物の構造躯体劣化を防ぐ重要な役割を持ちます。
防水層の劣化が進むと、以下のような問題が発生し、深刻な被害につながる可能性があるため注意しましょう。
- 防水層のひび割れ・膨れ・剥離・破断→小さな隙間でも雨水の浸入口になる
- ホコリ等の汚れが溜まることによる排水不良→排水口周りの負荷が大きくなり、脆弱部分の劣化が進行し、雨漏りにつながるリスクがある

- 防水層の下に雨水が浸入することによる構造躯体の劣化→コンクリートの劣化(中性化)や鉄筋・鉄骨の劣化(腐食・膨張による爆裂等)につながる
- 室内への雨漏り→内装材・設備機器や、家電・家具の被害が発生

- 建物寿命が短くなる→構造躯体の劣化が進行すると、建物の長寿命化を阻害する可能性も
- 資産価値が低下する→共用部の管理が行き届いていない物件は、安値でしか売れない・売れるまで期間がかかる等の問題が生じる可能性も
近年、施工費や資材費の高騰、住民の高齢化等の原因により、修繕積立金が不足し、屋上・バルコニーの防水改修を実現できないマンションが増えています。
国土交通省がマンション管理組合を対象に実施した調査によると、「現在の修繕積立金の残高が計画に対して不足している」と回答したところが36.6%に達しました。
しかし、現時点で雨漏りしていないマンションでも「改修は不要」という訳ではありません。
目に見える雨漏りは、防水層の劣化がかなり進行してから発見されるケースも多いためです。
そのため、マンション管理において、屋上・バルコニーの防水改修に加えて、専門家の調査により、雨漏りを早い段階で見つけて劣化の進行を食い止めるための定期的な建物(防水)診断は重要な役割を担っています。
屋上・バルコニーの防水改修工事はいつ必要なのか|国土交通省の周期目安

結論からいうと、マンションの防水改修工事を実施すべき時期は、物件ごとの劣化状況によって異なります。
ただし、国土交通省の令和6年6月改訂「長期修繕計画作成ガイドライン」では、屋上の防水について、以下のように改修周期の目安(参考値)が記されています。
| 防水改修工事の内容 | 周期の目安(参考値) |
|---|---|
| 屋上防水※の「補修・修繕」 | 12~15年 (伸縮目地の打替え、保護コンクリート部分補修等) |
| 屋上防水※の「撤去・新設」 | 24~30年 (下地処理+ウレタン塗膜防水通気緩衝工法等) |
(出典:国土交通省|マンション管理に関する各種ガイドライン等|長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン(コメント含む)最終改訂:令和6年6月7日 P.121)
※上記資料ではバルコニーの防水について触れられていませんが、同様の工事周期を目安とする場合が一般的です。
ただし、同資料には「時期(周期)は、おおよその目安であり、立地条件等により異なる」と明記されており、あくまでも参考値として工事計画に取り入れることが重要です。
また、ウレタン防水の密着工法・通気緩衝工法の場合は、5〜10年でトップコートの再塗装が推奨されている場合もあります。
そのため、実際に防水改修の時期を決める際は、「建物の立地・既存防水の種類・建物(防水)診断の結果(劣化状況)・これまでの工事履歴・大規模修繕計画の内容」を踏まえた物件ごとの検討が欠かせません。
▶︎関連コラム:防水工事は建物を長持ちさせるための“要”|リフォームの工法や耐用年数を解説
▶︎関連コラム:アパート・マンションやビルで雨漏り!その原因や対処方法を解説
屋上・バルコニーの防水改修を検討したい代表的な劣化症状

屋上やバルコニーの劣化症状は、防水工法の種類によって異なりますが、以下の現象を見つけたら、早めの改修工事が必要です。
| (主な劣化症状) | (具体的な状態とリスク) |
|---|---|
| ひび割れ・亀裂 | ・表面に細かいひび割れや幅の広い亀裂が生じる ・毛細管現象により、わずかな隙間からでも雨水が浸入するリスクがある |
| 防水シートの膨れ・浮き | ・防水シートの下に雨水や空気が浸入し、熱によって膨張する ・防水シートと下地の密着性が低下し、劣化や破断につながるリスクがある |
| 防水シートの剥離・破断 | ・防水シートの継ぎ目が剥がれたり破れたりする ・大きな隙間が生じて雨水が浸入するリスクがある |
| 水たまり 排水不良 |
・排水口(ルーフドレン)の詰まりや施工時の勾配不良によって部分的に水たまりができる ・水が溜まる部分は防水層への負荷が大きく、他の劣化症状につながるリスクがある |
| 雑草 | ・ホコリやゴミが溜まっている場所は水分を抱え込みやすく、雑草が生える ・雑草の繁殖は植物根被害※につながり、雨漏りの原因になりやすい |
| 色あせ チョーキング※ |
・防水層が光沢を失ったり、表面を手でこすると白い粉がつく ・塗膜の保護機能が紫外線の影響で低下しているサインで、放置すると、他の劣化症状につながるリスクがある |
※植物根被害:防水の場合は、根が伸びて防水層を貫通する被害を指す
※チョーキング(白亜化現象):塗料に含まれる合成樹脂が紫外線や風雨で分解されて、表面に粉末状になってあらわれる現象
これらの症状は工法によっては目視で確認できますが、進行度合いや改修の緊急性は専門家でないと判断が難しい場合もあるため、雨漏り等深刻な事態になる前に、早めの建物(防水)診断を受けましょう。
▶︎関連コラム:屋上防水工事の適切な時期とは?劣化サインの見極め方や防水業者の選び方を解説
▶︎関連コラム:ウレタン防水が劣化する原因とは|症状別の対処法や塗り直しの目安を解説
屋上・バルコニーの防水改修前に行う「建物(防水)診断」とは

建物(防水)診断※とは、建築士や施工会社等の専門家が建物の状況を確認し、劣化状況とその改修プランを提案する作業です。
※建物調査や建物状況調査等と呼ばれる場合もある
主な調査項目
屋上やバルコニーの防水層を調査する場合は、以下の点を確認します。
- 防水層表面の状態(汚れ・水たまり・雑草の有無)
- ひび割れ・膨れ・浮き・剥離・破断の有無
- 排水状態(不良部分がないか)
- 下地の状態(防水シートが剥離・破断して下地が露出している場合)
- 立ち上がりの状態(防水塗膜が摩耗していないか等)
- 笠木※周辺(コーキング処理や笠木本体の劣化有無)
- ドレン※周辺(防水シート端末処理の劣化有無)
- 雨漏りの有無(共用部の目視チェック・住民からのヒアリング)
※笠木:屋上やバルコニーの立ち上がり部分(パラペット)や手すり壁の天端に取り付ける金属製のカバーで、天端からの雨漏りを防止することが目的
※ドレン:屋上やバルコニーにおいては、排水口や排水管を指す
調査方法
実際の作業は、目視調査が基本ですが、状態によっては打診調査※や赤外線調査※を用いる場合もあります。
※打診調査:打診棒やテストハンマーで屋上や外壁を叩き、音の変化で下地からの浮き等を見つける方法
※赤外線調査:赤外線サーモグラフィカメラによって建物の表面温度を測定し、その変化から、外壁や防水層の浮き・水分の滞留等を推定する方法
既に雨漏りが発生しているマンションでは、その浸入口を特定するために、散水調査※や紫外線投射発光調査※も実施します。
※散水調査:雨漏りの浸入口と考えられる部分に水を流し、通り道を調べる方法
※紫外線投射発光調査:蛍光染料等を利用して、紫外線を当てて水の通り道を調べる方法
また、劣化がかなり進行していると考えられる場合や、非破壊検査※で雨漏りしている部分を特定できない場合は、建物の一部を壊して詳細を確認する破壊(微破壊)検査を実施することもあるためご注意ください。
※非破壊検査:目視調査・打診調査・赤外線調査・散水調査・紫外線投射発光調査等、建物を破壊しない方法
調査費用の目安
目視調査や打診調査は「無料」で実施する施工会社が多いですが、建築士に依頼すると数万円程度かかる可能性があります。
赤外線調査・散水調査・紫外線投射発光調査は、10万円以上かかる場合が一般的で、破壊(微破壊)検査の費用は、建物の規模や破壊する範囲によって大きく異なり、復旧工事を要する場合もあるため、事前に調査会社に見積もりを依頼しましょう。
全ての調査において、足場が必要な場合は、別途、追加費用がかかる点にはご注意ください。
依頼する際のチェックポイント
建物(防水)診断を依頼する際には、以下の点を確認し、調査会社を選びましょう。
- 調査会社の実績(診断および改修工事の施工について)
- 調査方法
- 調査報告書の内容
- 施工を依頼した場合の現場管理体制
- 施工を依頼した場合の保証やアフターメンテナンス等のサービス内容
特に重要となるのが、調査報告書の内容です。
劣化部分の写真や現状報告にとどまらず、改修計画についても提案されるか必ず確認しましょう。
▶︎関連コラム:建物調査が大規模改修工事の前に必要な理由|調査項目や流れを解説
屋上・バルコニーの防水改修工事にはどのような工法があるのか|種類と工程

マンションの屋上やバルコニーには、主に「ウレタン(塗膜)防水・シート防水・アスファルト防水」の3種類が採用されており、それぞれ改修方法が異なります。
ウレタン(塗膜)防水

ウレタン(塗膜)防水とは、躯体の上にウレタン系防水材を塗り重ねて防水層を形成する方法です。
狭小部位の施工も容易で、多くの建物に用いられており、改修は既存の劣化具合によって段階的に行われます。
トップコートの塗り替え
(劣化が進んでいない場合)

部分的な摩耗・剥がれ・浮き・膨れの補修
(部分的に不良箇所が見られ、全体的にはあまり傷んでいない場合)
排水ドレンの詰まり清掃
(排水ドレンが詰まっていると周囲の防水層を傷めてしまうため、定期的な清掃が必要)

下地からの全面改修
(劣化がひどく、既に雨漏りしている場合等)
劣化が軽度な場合や定期的にメンテナンスを繰り返している場合には、トップコートの塗り替えだけで防水層の機能を維持できます。
ただし、全体的には傷んでいない場合でも、よく歩行する部分だけ表面が摩耗していたり塗膜が傷ついていたりすれば、その周辺に剥がれや浮き・膨れが発生することもあります。
そのような場合には、部分補修できる可能性もあるので、施工会社に相談しましょう。
▶︎関連コラム:ウレタン防水とは?工法・費用・耐用年数まで完全解説【失敗しない選び方】
シート防水

シート防水とは、躯体の上に塩化ビニル系防水シート等を施工する方法で、シート状の防水材を施工するため、塗膜防水と比べて施工工程を簡略化できる場合がある点が特徴です。
こちらもウレタン(塗膜)防水と同様に、改修工法は劣化度合いによって段階的に行います。
部分的な摩耗・剥がれ・浮き・膨れの補修
(部分的に不良箇所が見られ、全体的にはあまり傷んでいない場合)
シートジョイント(重ね部)の口開き補修
(シート同士のジョイント(重ね部)が口開きしたり剥がれたりした場合)
排水ドレンの詰まり清掃
(排水ドレンが詰まっていると周囲の防水層を傷めてしまうため、定期的な清掃が必要)

下地からの全面改修
(劣化がひどく、既に雨漏りしている場合等)
ウレタン(塗膜)防水と主な流れは同じですが、部分的な不具合があればシートをパッチ処理等で部分補修できます。
シート端末部は特に雨水が浸入しやすいため、平場よりもさらに劣化していないか重点的にチェックすることが重要です。
▶︎関連コラム:シート防水とは?マンション管理組合が知るべき改修工法の種類と費用、大規模修繕の注意点
アスファルト防水

アスファルト防水は、アスファルトルーフィングと呼ばれる防水シートを重ねて貼り付ける工法で、長い施工実績があり、耐久性・防水性に優れた工法として広く採用されています。
ウレタン(塗膜)防水やシート防水とは異なり、表面の仕上げによって劣化症状が違うため、状況に合わせた改修方法を選ぶ必要があります。
【露出アスファルト防水】
シートの摩耗、膨れ、ジョイント(重ね部)の口開きの部分補修
(部分的に不良箇所が見られ、全体的にはあまり傷んでいない場合)
【押さえコンクリート仕上げ】
伸縮目地材の飛び出しやコンクリート面の欠落、ひび割れの部分補修
(部分的に不良箇所が見られ、全体的にはあまり傷んでいない場合)
【共通】
排水ドレンの詰まり清掃
(排水ドレンが詰まっていると周囲の防水層を傷めてしまうため、定期的な清掃が必要)

下地からの全面改修
(劣化がひどく、既に雨漏りしている場合等)
押さえコンクリートの場合には防水層のダメージが表には見えてきませんが、露出アスファルト防水の場合には目視で劣化を確認することが可能です。
(手すり・フェンスのない屋上やバルコニーのセルフチェックは非常に危険ですので、状況に応じて専門家に調査をご依頼ください。)
▶︎関連コラム:アスファルト防水とは?工法・耐用年数・補修のタイミングをわかりやすく解説
関東防水管理事業協同組合(関防協)のサイトでは、既存の防水工法別に適した改修方法が見つかるチャートを紹介していますので、「屋上防水のメンテナンスを検討したい」「古い建物なので雨漏りが心配」とお考えの方は、ぜひ一度お試しください。
屋上・バルコニーの防水改修工事にかかる費用はどのくらいか|見積もりのチェックポイント

屋上・バルコニーの防水改修工事にかかる費用は、「既存防水工法の種類・改修面積・下地の状態・劣化度合い」によって大きく異なり、「1㎡当たり◯◯円」や「一般的なマンションで一式◯◯円」等、一律の単価は断定できません。
ただし、国土交通省がマンション管理組合を対象に実施したアンケート調査によると、防水改修工事を含む大規模修繕工事にかかった費用は、「100~125万円/戸」の割合が最も高く、次いで「75~100万円/戸」、「125~150万円/戸」が多い結果となりました。
※上記価格は、共通仮設費・消費税別途
(出典:国土交通省|マンションに関する統計・データ等|令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査について(概要))
この金額には、外壁改修等その他の工事にかかる費用が含まれている点や、調査当時から現在で建設費・資材費が高騰している可能性がある点には注意が必要です。
防水改修工事の見積もりを確認する際には、以下のポイントを確認しましょう。
- 改修工事の詳細な内容(相見積もりの場合は特に要注意)
- 使用する材料や工法の種類・グレード(相見積もりの場合は特に要注意)
- 見積書の有効期限(いつまでに発注すればこの金額で工事できるか)
- 保証内容(製品保証に加えて施工保証も要確認)
- 現場の管理体制(工程ごとの検査ルール等)
- 受け取れる書類の種類(現場報告書等の有無)
多くのマンションでは、防水改修を含む大規模修繕工事は複数社に見積もりをとりますが、その際にも、金額だけで比較せず、具体的な工事内容と仕様を含めた検討が重要になります。
マンションの屋上・バルコニー防水改修工事を失敗しないためのポイント|大規模修繕工事との関連性

マンションの屋上やバルコニーの防水改修工事は、建物の寿命に大きな影響を及ぼすため、長期修繕計画において重要な意味を持ちます。
国土交通省の長期修繕計画ガイドラインにおいても、防水改修は主要な工事項目の1つとして扱われており、仮設工事(足場工事等)の効率化や管理組合の負担軽減の理由から、外壁改修等と同時に行うことが一般的です。
ただし、屋上やバルコニーの防水改修を現在の大規模修繕計画に合わせて実行することは、必ずしも正解とはいえません。
防水改修工事を失敗しないためには、以下の点に気をつけましょう。
「築年数・周期の目安・大規模修繕計画」だけで改修時期を決めない(診断結果に基づく工事計画)
屋上やバルコニーの防水改修工事を行う時期を、築年数や工事周期の目安、大規模修繕計画の内容だけで決めると、現状によっては雨漏りが進行する等のリスクがあります。
特に注意しなくてはいけないのが、「防水改修を大規模修繕工事まで待つ」点です。
確かに、工事や管理組合による作業の効率化において、防水改修を大規模修繕工事に含めて行うことは推奨されています。
国土交通省のガイドラインでは、大規模修繕工事の周期を12~15年程度が目安していますが、既に防水層が劣化していると、推奨する年数待つと漏水に発展する恐れがあり、大規模修繕工事まで工事を先送りできないケースは珍しくありません。
(出典:国土交通省|マンション管理に関する各種ガイドライン等|長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン(コメント含む)最終改訂:令和6年6月7日)
そのため、防水改修の実施時期は、建物診断の結果を最優先にして決定しましょう。
▶︎関連コラム:マンションの大規模修繕は何年ごとがベストか|ガイドライン・目安年数と工事時期を決める方法、減税・補助金を解説
「建物診断・長期修繕計画の見直し」は定期的に行う
建物診断の実施および長期修繕計画の見直しは、5年に1回程度は実施しましょう。
長期修繕計画のガイドラインでは、物価変動による工事予算の変更や、劣化状況の確認を目的に、5年程度の周期で計画を見直すことを推奨しており、計画の見直しには建物診断の実施が欠かせません。
(出典:国土交通省|マンション管理に関する各種ガイドライン等|長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン(コメント含む)最終改訂:令和6年6月7日)
建物診断を行い、その結果を踏まえて長期修繕計画を見直すことにより、建物の劣化進行を遅らせて、将来実施する大規模修繕計画の工事範囲が狭まって、資金不足のリスクを抑えられる可能性があります。
屋上防水の改修は「かぶせ工法」「断熱改修」という選択肢も

屋上の防水改修を検討する際には、「かぶせ工法」「断熱改修」の選択肢もあります。
後から「改修方法の選択を間違った」と後悔しないように、事前に概略を押さえておきましょう。
かぶせ工法
かぶせ(被せ)工法とは、既存の防水層を撤去せずにその上から新規の防水工事を施す方法を指し、既存のウレタン(塗膜)防水・シート防水・アスファルト防水において、状態等の条件を満たせば、採用できる場合があります。
かぶせ工法の主なメリット・デメリット(撤去工法との違い)は、以下のとおりです。
| 【メリット】 | ・既存防水層の撤去工事が不要(工事費用、廃材、施工にかかわるCO2排出量の削減) ・工期を短縮できる(解体撤去作業が不要なため) ・撤去に伴う騒音・ホコリの影響が少ない ・既存防水層の防水効果が生きている場合は、それを残せる |
| 【デメリット】 | ・新規防水層分の重量が追加される(荷重負荷が増えるため、建物強度の確認が必要) ・既存防水層の調査および表面処理が必要(既存防水層と新規防水層の相性が悪いと、施工不良になる可能性も) |
これらの点から、全てのマンションがかぶせ工法に適しているとは限らず、十分な知識と経験のある専門家が調査した上で適切と判断した場合のみ採用しましょう。
▶︎関連コラム:かぶせ工法とは?工法で変わる屋上防水の工事期間と改修費用
断熱改修(サーモコントロール断熱)
「最上階が暑い」とお困りのマンションの管理組合様は、屋上防水の断熱改修も検討してみましょう。
断熱改修(サーモコントロール断熱)とは、「断熱材+防水層+高反射塗料(遮熱)」を組み合わせた断熱防水改修工法で、省エネ性能の向上や、防水層の温度変化を抑える効果が期待できます。
夏の暑さだけではなく冬の寒さも軽減でき、防水層や躯体コンクリートの長寿命化につながるため、多くのマンションに採用されています。
(断熱の効果は建物ごとに個人差があります。ご了承ください。)

屋上の断熱改修は、マンション室内の暑さ・寒さ対策に加えて、建物寿命の維持につながる可能性がある点もポイントです。
【FAQ】屋上・バルコニーの防水改修に関する「よくある質問」

ここでは、屋上・バルコニーの防水改修に関して、多くの方からいただくご質問を紹介します。
Q.マンションの防水改修工事で使える補助金や税制優遇制度はある?
A.屋上やバルコニーの防水改修工事に関する補助事業は行われていませんが、自治体が実施する融資制度の対象になる可能性があり、2026年度末までに工事を完了して自治体に申告すると、固定資産税の減税を受けられる場合もあります。
例えば、「東京都マンション改良工事助成制度」は、分譲マンションの屋上防水やその他共用部の改修工事で融資を利用した場合、利子の補給を受けられる制度です。
(出典:東京都マンションポータルサイト|分譲マンションの修繕への助成(東京都マンション改良工事助成制度))
また、2026年度末までに大規模修繕工事を行うと、「マンション長寿命化促進税制※」に基づき、区分所有者の固定資産税(家屋分)が減額される可能性もあります。
※詳細は「2027年3月終了「マンション長寿命化促進税制」とは|対象要件と申請の流れ、管理組合必見の申請ポイントを解説」をご覧ください。
そのため、防水改修工事を行う際には、自治体の建築課等に利用できる制度がないか確認しましょう。
『関東防水管理事業協同組合』では、断熱改修費用の一部を補助する「バリューアッププラスキャンペーン」を実施しておりますので、各種補助金や税制優遇制度と併せてご活用ください。
Q.マンションの屋上・バルコニーを防水改修する場合の工期はどのくらい?
A.マンションの規模と防水工法の種類、下地補修の有無等によって工期は大幅に変わります。
なお、戸数が30戸程度の中規模マンションの場合、工期単体は0.5〜1ヶ月程度ですが、「建物診断・施工会社による工事計画および見積もり作成・管理組合による検討・工事発注・引き渡し」まで、半年程度かかるケースは少なくありません。
梅雨や台風の時期、極端に気温が下がる冬場等、防水工事をできない期間もありますので、工事計画を立てる際には、余裕のあるスケジュールを設定しましょう。
既に雨漏りしていて緊急的な処置が必要な場合は、ご自身で対処せず、必ず施工会社に応急処置してもらってください。
Q.バルコニーの防水改修工事は、住民が在宅していなければできない?工事期間中はバルコニーが使えなくなる?
A.各部屋のバルコニーを防水改修する場合、作業員の出入りが生じるため、原則としてご自宅を工事する日は在宅していただく必要があります。ただし、大規模修繕で外壁改修のために足場を組んでいる場合は、そこから出入りできるため、不在の状態でも作業可能です。
防水改修工事には複数の工程があるため、作業内容によっては安全上の観点から立ち入り禁止とする場合が多いため、詳細は事前に施工会社までご確認ください。
Q.屋上・バルコニー防水改修工事の保証期間はどのくらい?
A.防水工事には、10年間程度の漏水保証が設定されるケースがあります。
ただし、工法・使用する材料・施工会社等によって保証期間と保証範囲は異なりますので、契約前にご確認ください。
▶︎関連コラム:雨漏りしても慌てない!防水工事の工法や業者の選び方を紹介
まとめ
屋上やバルコニーの防水改修工事は、マンションの建物寿命と快適な住環境を維持するために欠かせない工事です。
適切な工事周期や工法は、マンションごとに異なるため、定期的に専門家による建物診断を受け、その結果を踏まえて、改修工事のプランを決め、長期修繕計画を見直しましょう。
ウレタン防水・シート防水・アスファルト防水の一般的な改修方法に加えて、既存防水層の上から施工する「かぶせ工法」や、室内の暑さや寒さを軽減できる「断熱改修(サーモコントロール断熱)」も選択肢の1つです。
まずは建物診断によって現在の劣化状況を確認し、その結果をもとに、工法・工事時期・予算を検討することが重要になります。
「マンションの屋上防水が劣化していないか心配」「長期修繕計画を見直すために、工事時期や工事金額の目安を知りたい」というマンションの管理組合様・所有者様は、建物診断の実績が豊富な関東防水管理事業協同組合(関防協)にご相談ください。
関防協は、無料建物診断から防水改修計画、施工までサポートしています。
主に関東の防水改修の会社で形成されているグループで、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の関東地域に限らず、山梨・静岡・長野・新潟にも支部があり、計196社※の正会員がおりますので、施工会社をお探しの方は当組合のネットワークをご活用ください。
※2026年8月時点


